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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

頼朝公御年6歳のみぎりのシャレコウベ

2009年08月16日(日)

 「頼朝公御年6歳のみぎりのシャレコウベ」は落語に出てくるいかさま骨董屋のせりふですが、私、自分の御年6歳のみぎりのシャレコウベを見たことがあります。
学校の廊下で転んで、脳震盪をおこし、レントゲン写真を撮ったのです。医師の説明の時に、母と一緒にそのレントゲン写真を見ました。母は一言。
「まあ、なんて怖い顔をした骸骨でしょう」
 って。だいたい骸骨は怖い顔に決まっているように思えるのですけど。医師の説明はすっかり忘れましたが、母の一言は今でも忘れられません。

 で、こんどは自分の心臓が動いているところをしっかりと見てきました。心筋梗塞を起こしたときに受けたステント手術の経過を見るための再入院検査を受けてきました。心臓ってのも、生まれる前から働き出して、昨今の脳死という定義を用いれば死んでからも働き続けるのですから、たいしたものです。

 ステントが再狭窄を起こしていないかどうかを調べる検査だったのですが、方法としてはステントを入れる手術を同じ方法です。その施術で500人に一人くらいは血栓が脳へ飛んで脳梗塞に罹患する人がいるそうです。500人に一人!でも脳梗塞が起きたらその人にとっては100パーセントの確立になるわけで。それからステントの再狭窄は30%から40%の確立。3人に1人は再狭窄しているってことですね。
 なんでも血管に入れたステントを血管の壁が内部に取り込もうとして、結果として血管が狭窄してしまうのだそうです。

 なぜか、私はフェンスの際に生えていた楠が、幹の中へフェンスを取り込んでしまう場面を思い浮かべました。

「そういう現象って、健康な反応ですよねえ?」
 と説明をしてくれた医師に質問ですと
「生理的には健康な現象です」
 というお答えでした。

 生理的には健康でも、心臓にとっては冗談じゃないっていう現象だとのこと。
 人間の社会では部署ごとにたいへんがんばると、全体的にはとってもへんてこりんな不都合が起きているということがありますが、人間一個の身体の中でも同じようなことが起きるわけねと、納得。

 そんなこんなで、再入院して検査を受けてきました。今度は前と違って、ちゃんと全部解っているのが「嫌だなあ」と思っていたところ、またもや検査の前にお薬が出てきました。なんでも「ちょっとぼうっとする」お薬だそうです。小さなカプセルがひとつ。円くて小粒なやつがひとつ。あとはちょっと角張った小さいお薬。この3粒を飲むと「ちょっとぼうっとする」のだそうです。

 そういうわけで、御年6歳のみぎりのシャレコウベに続いてもう50年も働いている心臓の動いている写真を見てきました。母がいたらなんて言うかしら?
「まあ、なんて丈夫の心臓だこと!作った私に感謝しなさい」なんて言うのかしら。

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