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糖尿病教室
2009年02月12日(木)
インシュリンの注射は、ご飯が最初に出た時から始めていました。最初に習ったのが「低血糖症とその対処法」。インシュリンを使い始めたらまず、これを覚えておかなくちゃならないみたいです。インシュリンを使い始めたらずっと使い続けなくちゃいけないと聞いたことがあったので、その点をヨシダセンセにお尋ねしてみました。
幼稚園や保育園には小さいのに、とても冷静で博士みたいな顔をした坊やが必ずクラスにひとりくらいはいます。ヨシダセンセは小さい時はきっとそういう坊やだったのだろうなと思わせる先生です。で、そのヨシダセンセは「ううん、づっと使い続けなくちゃいけないかどうか、今のところちょっとわかりません」でした。わからないということは、使い続けなくてもいい場合もあるわけだなあとぼんやりと理解。2、3日したら「注射じゃなくてお薬の服用に戻せるかもしれませんよ。今は心臓を保護するのに即効性の注射を使っていますけど」というお返事がきました。
この即効性という意味がよく解らなかったのですが、要するに何かを食べる直前に注射をするとすぐに効き目が出るという意味らしいのです。だから最初に看護師さんから低血糖の説明があったわけです。それから「退院後に通う病院を決めて下さい」とも言われました。順天堂は大混雑ですから、慢性病の糖尿病の治療に通うのは不向きなので、どこか病院を決めてから退院して欲しいということで、決めなくちゃ退院させないよとまで言い出しそうな感じでした。最初は自宅の近くが良いとのことでしたが、お話をして行くうちに飯田橋に順天堂系列の専門クリニックがあって、ビジネスパーソンのための夜間診療もしているということが解り、その病院がよさそうだと、そこに通うことを決めました。 その間にも、ご飯のたびに血糖値の測定とインシュリンの注射の方法を練習していたわけです。
火曜日に糖尿病の授業をふたつ受けて下さいと言われた時「90分ですか?」と尋ねると「60分です」というお答え。「試験もあるのかしら」と半分冗談で聞いたら「試験はありません」というお答えでした。でも試験問題はありました。
二度目の火曜日に糖尿病教室に行くと受講生は4人。おじさんが二人とお婆さんそれに私。午前中は糖尿病一般についてのお話。毎日、病室で出されているご飯は身長を基準にしたものだそうです。実際に食べた感じで覚えて下さいという説明。すると私の隣にいたおじさんが 「俺に食べさせないで女房に食べさせてくれ」 といいました。確かにそのほうが実際的かもしれません。 「奥様にも入院してご飯を食べてもらうコースもあります。保健適応ではありませんが」 というお答えで、へえと思いました。 説明が進むうちにまた隣にいたおじさんが 「こういう糖尿病のメニューを弁当にして届けてくれるとか宅配してくれるってのはないのかしら」 と言うのです。すると 「割高ですけど、そういう宅配メニューもあります」 「それを注文して女房に食べさせればいいんだ」 とおじさん。確かにそれはいい考えです。 「奥様だけじゃなくて一緒に食べて下さい」 それはそうだ。 「病院のご飯はおいしくないかもしれませんが、食べた感触で一日の摂取量を覚えていただくといいのです」 と先生。するともう一人のおじさんが言いました。 「病院のご飯はまずくないよ。おいしいです」 そうなんです。病院のご飯はおいしかったのです。 午前中はこんな具合でお終い。 午後は「糖尿病と使用する薬」の話。プリントが配られました。プリントを見ると最後に括弧の中に正解を書き入れる問題が10題ほど出ています。10題のうち2、3題はひっかけがありそうな曲者の問題。ほうらね、試験はないけど問題は出てくじゃんと思っていたら、お話の最後のほうで、この問題をとくことになりました。どういうわけだか、ひっかけ問題ばかり私の回ってきました。ま、私が講師でもスムーズに講義を終わらせるために同じ選択をしたかもしれませんが。
授業のあとで病室に来たヨシダセンセが「お教室はどうでしたか?」と尋ねるので「糖尿病のことがよくわかりました」と当たり障りのないお返事をしました。 「間食をしていただきたくないというのがあのお教室のねらいなのです」 と、これを聞いて、それまで糖尿病一般について円を描くように教えてもらったという印象が、急に一本の筋が通って全体の狙いが見えました。ああ、そういうことかと納得。何かを食べれば血糖値は上がるのは当たり前なことで何も食べないわけには行きません。そこで、一日24時間のうちにどうやって血糖値が低い時間帯を確保するのか、それが重要だということになるわけです。お話していて、そのポイントがぴんと来たわけです。
病院にいる間に次々にいろんなことを説明されました。説明されて理解できるうちはいいけど、もっと年をとったらどうなるのでしょうね?だんだん新しいことや面倒なことは理解しにくくなるわけで。 大学の教授会でさえ、新しい概念や考え方が入っているたびに、もめるというのではなくて、概念の理解や考え方の理解がうまく行かなくて迷走することがあります。そんなの年中で、説明ってのもなかなかむずかしいもんだなとため息が出ることも珍しくありません。
それはともかくとして、これで退院です。家からはもう退院用の靴も上着も届いていました。でもスカートだけは届いていなかったのです。スカートがなくちゃ病院の外に出られないじゃん。たぶん娘がそうしたのでしょう。やれやれ。もちろん、翌日には息子と娘がスカートを持って迎えに来てくれました。
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