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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

田原総一郎ノンフィクション賞

2009年02月13日(金)

 というわけで、退院しました。入院中お世話になったお医者さん看護士さんどうもありがとうございます。御礼申しあげます。

 で、ここからは心臓に悪い話。作家の宮崎学さんが私を大急ぎで探しているという報告は、息子からも、このHPの管理人の豆蔵さんからも報告が入っていました。
「はて、なんだろう?」とは思いましたが、集中治療室から出てきたばかりじゃあ、どんなに探されても何もできません。それで、豆蔵さんにも息子にも「心筋梗塞を起こして入院中だ」と伝えてもらうように頼んでおきました。

 そんなに大急ぎなら一週間も過ぎてしまえばもう「御用済み」だろうと思っていたら、退院してみると宮崎さんから「連絡を下さい」と留守電が入っていました。

 私が歯槽膿漏の痛みを抱えていた時、新幹線の中で数学者の森毅さんに出会ったことはこのコラムにも書きました。森さんとは同じ車両だったので、新幹線に乗り込むときにご挨拶をして立ち話をしてます。「この頃、知り合いがようけい死によって」というお話をしたのです。同じ新幹線には宮崎学さんも乗っていました。が、こちらは恐ろしいほどの痛みで、それどころではなかったのです。この時、ホームを歩いている二宮清純さんも見かけました。なんだ、この新幹線は、月刊誌の目次みたいじゃないかと、思いつつ、歯医者さんに電話をしたのです。痛みが尋常ではなかったので、飛び込みで診療してもらう気になりました。例の痛いで歯医者さんに連絡をとったのはこれが最初。

 宮崎さんを一番最近に見たのはこの時ですが、そんなわけでお話もしませんでした。この時の痛みの帰結はここまでに書いてきたわけですが、今度はその宮崎さんから「連絡を下さい」の伝言。

 電話してみました。すると、宮崎学、魚住昭、佐藤優で「田原総一郎ノンフィクション賞」を作るのだというのです。こう言っちゃあなんですが、想像するだけで、なんか心臓に悪そうなメンバーだなあと、電話を聞いている私。出版社やテレビ局の支援を受けない独立系の賞にするということで、資金援助を申し入れた版元もあったけれども断ったということでした。ますます心臓には悪そうな話であります。

 ノンフィクションというのは、取材で小さな事実証言を積み上げ、さらには、その事実や証言のウラもとるので本はいきおい厚くなるのです。8ポ2段組400ページなんて当たり前。賞を制定するなら、その分厚い本なり原稿なりを読まなくちゃならないのです。運動なら心臓リハビリでどの程度の運動が可能か知れべられますけど。読むのもけっこうこれで身体を使うのです。なにもフィクションの作家である私をひっぱりださなくても、ねえ。昨日まで病院にいたんだし。「女の人にひとり入ってもらいたいんで」というのがその理由でした。

 急いでいたのは記者会見までに、私の意志が知りたかったというのが理由でした。1月22日に記者会見があったそそうです。
「それで、もうどなたか決まったのでしょ」
「いや、選考委員をさっき言った『3人ほか』ということにして、『ほか』は誰だと聞かれたけど、交渉中ということになってます」
 そんなあ。ああ、やっぱりこれって心臓には悪いよ。運動検査じゃなくて読書検査ってのがあればやってもらわなくちゃ。1日に200ページ以上は読むなとか。

 この件を知人に話しすと
「それでどうしたの?」
 と聞かれたので
「うん、と言っちゃったんだ」
「じゃあ、やっぱり今までと変わらないじゃ」
 とまあ、そういうことなのです。どう考えても心臓に悪そう。

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