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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

心臓リハビリ

2009年02月09日(月)

 水曜日になると退院の話題がぼつぼつ出てきました。「一週間で退院ですね」という看護師さんいれば、「もう一週間で退院ですね」という看護師さんがいます。「1週間で退院」と「もう一週間で退院」ではえらい違いです。
 そういえば、カテーテルを抜いてくれたお髭の先生が「これなら一週間で退院できるけれども、内分泌科がなんと言うかしら」と言っていました。ここにきて、心臓よりも糖尿病のほうが重大になってきたのです。こんな患者さんを野放しにするわけにはいかないと、そんなふうに思われたのかもしれません。

 血栓予防の靴下というものを集中治療室で履かせてもらいました。足の甲とふくらはぎを締め付けるハイソックスみたいなもので、つま先はゆるゆるで、踵はありません。この風変わりな靴下は、足の血管に血栓ができるのを防ぐ効果があるのだそうです。で、火曜日にこれが窮屈になって脱いでいたら「ちゃんと履いていてください」と叱られてしまいました。

 その靴下を脱いでもいいというお許しが出たのは水曜日の午後でした。それからあのトランジスター型の発信機もとってもらいました。シャワーを使ってもいいと言われました。またマカロン先生は「少しそのへんを歩き回って下さい」とも。
 その辺とはどの辺か? と思いつつ、たぶん病棟の同じフロアの中だろうと見当はついたのですが、内緒でそっと外来の受付がある階までエレベーターで降りてみました。もう外来の時間は終わっていて、静かなロビーにはお雛様が飾ってありました。ガラスの扉の向こうには、上り下り2本のエレベーターがあり、その向こうは御茶ノ水へ続く通りでした。「やあ、ちょっと下界を降りてきたぞ」という気分。同時に「ほんとに順天堂に入院していたんだ」と実感。叱られないうちに病棟に戻りました。

 家からは簡単な室内履きが届けられて、人が靴で歩くところをうろうろするには心もとないところがありました。これは娘が、靴などを届けると病院を抜け出したりしかねないと思ったみたい。お財布も5,000円だけ入れた娘のお財布が届いていました。その娘はいつも会社の帰りに病院へ寄ってくれていました。

 というわけで水曜日には手術のあとで身につけたものがすっかりとれたのでした。で、木曜日の朝、ごはんと一緒に来たメモには「心臓リハビリ」の文字。リハビリというと麻痺のある部位の機能回復のイメージがあったので、はて? 何をするのだろうと首をかしげました。時間になると看護師さんが車椅子で迎えに来てくれました。で行った先はスポーツジム。ふつうのスポーツジムとの違いは、ウォーキングマシーンをパジャマで使っている人がいるくらいです。

 でまずビデオに身ながらストレッチ。それか自転車を10分ほど漕ぎました。で、終わったら病棟からまた看護師さんに車椅子で迎えに来てもらったのです。あとマカロン先生に「車椅子でスポーツジムに行くのはなんだか妙な気分です」とお話したら「介護度の程度を下げましょう」とのお返事でした。それで金曜日には自分で歩いてジムに行きました。歩き回ってよい範囲が「そのへん」から「病院内」になったのはマカロン先生とお話してからでした。

 大阪芸大に行っていた長谷川さんが東京に戻って病院へ来てくれたのも木曜日のことでした。「もしもの時には長谷川さん考えてね」とお願いすると「ロマンチックになるな」の返事。どうもこの会話はかみ合っていないなあと、やや困惑。「もしもの時」を「支離滅裂な原稿ができたとき」ではなく「死んじゃったとき」と受け取ったようだと気づいて訂正しようとしたとき、このHPの管理人の豆蔵君と、このHPを作ったオントフの金承福さんがやって来ました。

 で「もしもの時」ってのは「死んじゃった時」ではありませんという訂正がだせないままになってしまいました。前日にノートブックパソコンごと原稿を持っていってくれた朴さんからは何もサデッションがありませんでしたから、たぶん支離滅裂原稿は免れたのだなと、あえて「死んじゃったとき」の訂正はしませんでした。まだ内緒なんだけど、この「豆畑の友」は近々リニューアルします。豆蔵君と金承福さんはその準備を進めてくれていたのです。で、頓挫しているリニューアルのことを話しました。

 金曜日は自分で歩いて心臓リハビリに。ストレッチをして自転車を20分漕ぎました。退院後の検診の時に心臓がどの程度の運動に耐えられるか調べてくれるとのことでした。

 気になったのは自転車の前においてあった体脂肪の模型。1キロのやつと3キロのやつ。日向で溶けかけたバターみたいな模型が気になって仕方がありません。触ったらぶよぶよしているのかべたべたしているのか、いったいどんなさわり心地なのでしょう?そこで「あとであの模型を触ってもいいですか」とリハビリ担当の先生に聞いてみると「触ってみますか」とすぐに1キロのほうを持たせてくれました。ずっしりぶよぶよでした。「こんな塊がお腹に入っているわけじゃなくて、腸の周りなんかについているんですよ」と言いながら3キロのほうも持たせてくれました。スーパーで鳥のレバーを買ってくると、時々、そういう脂肪がついているのがあります。あれにそっくりな色をしていました。

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