中沢けい公式サイト 豆畑の友
ホーム プロフィール・著作リスト 中沢けいへの100の質問 中沢けいコラム「豆の葉」 お問い合わせ
中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

万年筆

2007年01月13日(土)

 銀座のイトウ屋で久しぶりに万年筆を見ました。増えていたのは高級シャープペンシルと高級ボールペンでした。それから20万円から30万円といったものすごく細工に凝った万年筆の陳列も呆れるほど増えていました。売り場は万年筆がある種の必需品だった時代よりも広くなっているくらいです。が、ものを書くための道具というよりも「装身具」もしくは「記念品」という感じで、なんだか宝石屋さんにでもいるような錯覚を起こしそうでした。

 万年筆はどうやら単なる筆記具から、装飾品にかわりつつあるようです。が、かわいそうなのは原稿用紙。こちらは種類もどんどん縮小。売り場の縮小。だんだん過去の遺物になりつつあるように見えます。そのうちに紙を選んで別注で刷らせるしかないなんて時代がくるかもしれません。20×20の桝目に文字を入れて行くということって、かなり意味のある作業なのですが、それも原稿用紙と一緒に等閑視されているみたいです。

 万年筆売り場でこころ魅かれるのは、どうしてもウォーターマンというフランスのメーカーです。最初に自分で買ったのが3000円の銀色の鍍金をしたウォーターマンだったという理由以外には、それに眼を引かれる理由はないような気がしますが、あれこれ見ているうちにやっぱりウォータマンがいいやという気になってきます。万年筆全盛時代の復刻を得意にしているメーカーもあるのですが、ウォーターマンはまだ実用品としての万年筆にニューモデルを作っているところがフランスらしい感じがします。実用品のニューモデルを選びました。それから、3000円の万年筆を買った頃には、絶対に欲しいという気も起きなかっただろうという値段の銀色の万年筆にもこころ魅かれました。軸を洋銀で作ってある万年筆です。あれだったら、使っているうちに軸が磨り減って真鍮色の地が見えてくるなんてことはなさそうだなと、眺めていました。3000円の万年筆は鍍金がはがれて真鍮色の軸が見えてきたのです。

↓前の日記 / 次の日記↑

   
談話室 リンク集「豆の茎」 メルマガ「豆蔵通信」 サイトマップ