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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

現代文学とエロティシズムの変容

2006年10月27日(金)

 タイトルのテーマで横浜で講演します。今月の文芸雑誌は新潮、すばる、文芸が新人賞を発表していますが、セックスの描写が、以前と比べてずいぶん変わったなあと思うと同時に、性のモラルの変化もそこに感じます。性のモラルは日本の文学では恋愛小説を書くうえで大きな障害になっていました。また性のモラルというものが、男女差に基づいていたので、不合理な男女差別を生み出している感じも強くありました。が、ほかのことと違って、なんとかなるものではありませんでした。

 簡単に言うと何をすてきだと感じるかは、まあ、理屈ではなくて感覚の問題であり、身体的な反応だからです。昔は(昔って言ってもほんの2、30年前)は理屈っぽい女なんて、女のとしての魅力がないなって平気で言っている男性がいたものです。「あなたが魅力を感じないのは勝手です」と応戦しておくよりほかになかったのですが、今はそんなことを言う人はほとんどいないでしょう。魅力を感じないというよりも、近寄りがたいと思う人はいるかもしれませんが……。そのあたりの変化についてお話したいと思っています。人間って、頭の中にしみ込んだ理屈で、身体の感覚も変わるんだなあと驚くような気持ちになることがあります。その一方で、ただ口先だけで理屈をこねても、身体がついてこないというようなこともままあるので、その兼ね合いを眺めるにはエロティシズムというテーマはおもしろいテーマだと感じています。

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