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天麩羅の話
2006年01月12日(木)
鈴木牧之の「北越雪譜」に中に天婦羅の話があります。大阪から江戸へ駆け落ちしてきた利助という男が、牧之の江戸京橋の家の裏に住んでいました。この男はなかなか気が利く者で、江戸では大阪では流行っている魚のつけあげを食べさせる店がないことに目をつけました。魚のつけあげ辻(道端)で売れば儲かるのではないかと山東京伝に相談したところ、ためしに調理してみろと言うことになり、なるほどこれは旨いと、商売を始めることになりました。すこで、これを売るに当たって何か良い名前はないかと利助が言うので、山東京伝が考えたのが「天麩羅」だそうです。
出奔して天竺あたりまでふらふらしてみようかという男が売るから「天麩羅」であり、麩には麦という字が含まれていて、さらに羅は薄い衣という意味なので、小麦の薄い衣をつけて揚げる食い物にはぴったりだということで、この文字を提灯に書き付けたのはまだ若かった自分だと牧之は書いています。利助は天麩羅をひとつ四文で売っておおいに商売繁盛そうです。
「北越雪譜」を雪国の生活を描いた随筆ですが、時々、こうした思い出話が混じったりして、そこがきままに書く随筆らしいところです。昨夜、天麩羅を食べたので思い出しました。ちなみに「てんぷらの話」に次の章は「雪中の狼」という章になっています。
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