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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

ゾラ・バルザック・フローベール

2005年10月20日(木)

 文芸評論家の秋山駿さんが「歳をとると中学生頃までに読んだものをくりかえし読むようになるんだ」とお話してたことがあります。秋山さんはドストエフスキーでした。ドストエフスキーは大事に思っている読者が大勢いるようで、うちの娘の「ガンバッテ」読んでいました。私の場合はドストエフスキーはやや苦手で、ロシア文学ならチェーホフでした。

 若いときってよくもわるくも「本気」で読んでしまうのですね。その「本気」が歳をとってからくりかえし読む原動力になると言うことがこの頃わかってきました。
で、鴎外の「青年」を読んでいると、やはり自分が馴染んだのはゾラであり、バルザックであり、フローベールだったんだなあと思いました。そんなに研究したというわけではありません。大人の本が読めるようになったばかりの頃に、なじみを感じて読んだのがそういうフランスの自然主義作家の作品だったのです。それが日本文学にも影響を与えて私小説を生んで行く道筋が、目に見えるような感じがこの頃してきました。高い丘の上に上って歩いてきた道を眺めているような気分です。

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