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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

原稿用紙3

2005年06月03日(金)

 丸谷才一さんの話を書いたら、その丸谷さんから新著を頂戴しました。「綾とりで天の川」(文芸春秋刊)です。また烏帽子大紋のお礼状をで大騒ぎなんてことはないのですが、偶然の符合が「うふふ」でした。

 書簡体も明治の頃から比べればずいぶん変化しています。夏目漱石の「それから」で大助が兄嫁に口語文の手紙を書いたらどうですかと勧めていますが、その頃はまだ手紙は候文で書くのが当たり前だったのでしょう。

 手紙の文章やその書き方の決まり(正書法)も活字化を前提にした原稿用紙の書き方にしだいに影響を受けて現在のような形に変化してきました。ただ、多くの人は自分の書いた文章が活字になることなどはないので、あまり原稿用紙の書き方などは意識しません。さらに言えば手紙の書き方がだんだんに、筆で書く文語文の正書法から鉛筆や万年筆で書く原稿用紙の正書法へ変化したことなどまったく見落としているのです。

 手紙は苦手だなあと感じている人はたくさんいて、電話が出てくると、かなりの用事が電話で済むようになってしまいました。そこにファックスが出てきて、さらに電子メールが登場して、追いかけるように個人のホームページやブロクが登場してきました。で、原稿用紙は過去の産物ということになるのかもしれませんが、原稿用紙が作った日本語の正書法はどうなるのでしょうか?

 ワープロが出てきてから、文章の段落の頭を一文字分空白にするという決まりが相当に無視されるようになりました。名前の知られた大出版社の発行する雑誌でもそうした様子が見られます。また、この文章のそうですが、段落ごとに一行の空白を作るのは、電子メールが出てきてからの習慣です。まだ決まりというほどではないのですが、かなりの人がこうした書き方を用いています。さらに文頭の一文字を大きくするレイアウトも、以前は雑誌や本などの紙面のデザインであって、正書法とは関係のない事柄でしたが、パソコン画面に直接にそうした修飾を入れることができるとなると、これも正書法のひとつに数えられる時が来るかもしれません。

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