中沢けい公式サイト 豆畑の友
ホーム プロフィール・著作リスト 中沢けいへの100の質問 中沢けいコラム「豆の葉」 お問い合わせ
中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

白い藤の花の香り

2005年04月30日(土)

 27日に叔母たちとお墓参りにでかけた時、南房総の館山ではもう藤の花が満開でした。藤は紫と白があります。お寺の駐車場では民家の生垣に蔓を巻きつけた白い藤が花房もたたわにいっぱいの花をつけていました。

 藤は香ります。昔(今でもあるかもしれない)アナイス・アナイスという百合の香りの香水がありましたが、その匂いに似ています。アナイス・アナイスは生の百合よりも幾らか甘く軽く爽やかな香りでした。藤の香りは目に見えない空気の中に、ふわりとしたかたまりを作っていて、不意の鼻先を通り過ぎて行きます。

 叔母が古風な「タブー」という香水を使っていました。「タブー」はある時期、一斉を風靡した香水ですが、今では手に入れるのが難しいそうです。そのオールドファッションの香りに新鮮な藤の匂いが交錯する瞬間があって、春が終わって行くのが惜しいようなひと時でした。

 源氏物語の輝く日の宮のお局は「藤壷」で、そのお庭には藤が植えられていたということになっていますが、やはり春の終わりには、こうしたすばらしい香りが漂ったにちがいありません。

↓前の日記 / 次の日記↑

   
談話室 リンク集「豆の茎」 メルマガ「豆蔵通信」 サイトマップ