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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

夜間飛行

2005年05月01日(日)

 朝、目が覚めるとなぜか「めぇめぇ」鳴く羊の声。あんまりお天気が良いので、頭の中もちょっとあったかくなってしまったのかと驚きました。隣接の住宅展示場にミニ動物園がやってきていたのです。羊は小さな柵の中をぐるぐる回りながら「めぇめぇ」鳴いていました。うさぎやハムスターなどのおとなしい動物がやってくるこの催しを、家の子どもたちが小さい頃は楽しみにしていました。で、その「めぇめぇ」を聞きながらこれを書いています。

 冬の夜、歳若い友人が香水の「夜間飛行」について、ロマンテックな話をしてくれました。小説にでもしたいような話でしたが、これはモデル問題が勃発しそうなので内緒。「夜間飛行」はサンテグ・ジュペリの同盟の小説にもとづいた命名の香水です。

 匂いや香りを言葉で説明するのはむずかしいのですが、この香水は一昔前の男性の整髪料の香りがかすかに混じっています。ま、おじさん臭いって言うと身も蓋もないのですが、女性の香水にしては幾らか苦さがまさっていると言う点でかつては最新の香りだった時代もありました。、で、ミラノのデパートで白髪のお婆さんがこの香水を買っているところを見ました。ああ、こんな年齢の人が若い頃からずっと使っている香水なんだと思ったものです。

 冬のうちに「夜間飛行」を一本買ってそのままになっていたのをあけてみました。かつてのおじさん臭いという感じはもうなくなっていました。香水を生産しているゲラン社が成分を多少調整しているのかもしれませが、こうした整髪料を好んでいたおじさんたちは双翼の飛行機とともに悠久のかなたに消えてしまったのでしょう。叔母の「タブー」もそうでしたが、「夜間飛行」や「タブー」のようなオールド・ファッションの香りもなかなかいいなあという感じです。

 「めぇめぇ」に「コケコッコー」という鶏の鳴き声も加わって隣のミニ動物園はなかなか賑やかになってきました。

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