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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

右翼の定義

2005年04月13日(水)

 ご承知のように右翼、左翼はイギリス議会で保守派が右、革新派が左に座席をとったことから起こった名称です。いつの時代にも進歩的な人と保守的な人がいますから、そういう意味では、右翼、左翼という政治的な色分けはなくなるということはないでしょう。

 が、その内実となると時代とともに変化しています。日本で右翼という場合は、共産主義、社会主義の考え方に対しての自由主義、資本主義の考え方をする人々あるいは民族主義的、国家主義的な立場に立つ人をさしてきました。さらには単に暴力団の呼び変えの場合もあります。実際、対暴法で暴力団の看板を出せなくなったので右翼団体を名乗っている組もあると聞いています。

 で、ソビエトが崩壊し、冷戦が終結した時点で、それまでの右翼左翼という分け方にも変化が生じてきています。さらに「進歩」という考え方もかなり疑念をもたれるものになってきました。例えば、科学技術の進歩は果たして人間を幸せにするのだろうか?という疑問が、身近なところに登場することも多くなりました。

 そこで残っているのが、民族主義、国家主義的な右翼という考え方です。しかし民族主義も国家主義ももともとは近代化の流れの中で生まれてきたものですから、おそらく、これからその内容が大きく変わって行くでしょう。

 私は家は川越街道沿いにあります。もう25年もここに住んでいますが、自衛隊の朝霞基地と練馬駐屯地があるので、越してきたばかりのころは休日というと、右翼が軍歌をがんがん流しながら街宣車で走り抜けて行きました。それがいつ頃からか?まったく通らなくなりました。昭和が平成に変わって数年後に、久しぶりに右翼の街宣車が来たと思ったら、なぜか松田聖子のヒットメロディーをがんがん流していました。

 ノ・ムヒョン大統領が来日した時に麹町で出会った右翼の街宣車は韓国語でしきりに「ウリガナラ」を繰り返しえました。日本語の「わが国」ですが、その「ウリガナラ」はいったいどっちの「わが国」なんだと「?」でした。韓国語の演説が全部聞き取れるほど私には語学力がなかったので。

 もしブッシュ大統領が来たら、アメリカ南部なまりの英語で演説したり、プーチン大統領の時はロシア語で、シラク大統領の時はフランス語で街宣なんて右翼が現れたら、自然に民族主義、国家主義も変化したものになって行くに違いありません。それにしても、ライブドアのニッポン放送買収騒動の時も六本木ヒルズを右翼の街宣車が取り囲んだそうですから、金と人が集まっていることは確かです。松田聖子のヒットメロディーを流していた時の右翼はきっと人材不足だったのでしょう。そこにまた人とお金が集まりだしているのです。が、人とお金が集まるほど、本来、保守主義であるはずの右翼も変貌せざるおえない状況が生まれてくるというジレンマを抱えることになりそうです。

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