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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

外国人の団体旅行

2005年03月19日(土)

 八重桜が高瀬川の縁を飾っている京都を歩いたのは去年の春です。フランス人は個人主義的な態度をとるから団体旅行などしないと聞いていたのですが、ホテルはフランス人の団体旅行客でいっぱい。フロントはフランス語の洪水に大混乱でした。

 3月のはじめに初めて広島の平和記念公園を歩いてきました。紅毛碧眼の外国人団体旅行客の姿。はてさて何人だろうとボランティアガイドの人の言葉に耳を傾けたらドイツ語でした。ドイツ人の団体旅行です。

 数年前の夏、こんなに暑くては観光客も少ないだろうと奈良・東大寺の大仏殿に久しぶりにお金を払って入りました。だってうっかり季節を考えずに入ると恐ろしいくらいの中学生や小学生の大群が出現しますから。これは広島でも同じかもしれません。大仏殿の中では、中国人団体旅行客と家族連れの韓国人旅行者が大仏を見上げていました。

 日本を旅行しているとあっちこっちで外国人旅行者と出会うようになりました。欧米人は団体旅行をしないと私たちが耳がたこになるくらい聞かせられた話は嘘だったんだなと思います。階級の感覚が根強く残っているヨーロッパでは、言葉の通じない国を旅行するのはそれなにのインテリだけだったようです。階級とか身分という感覚が少ないアメリカ人はもっと前から団体旅行をしていました。

 お伊勢参りなどで江戸時代から団体旅行をしていた日本は団体旅行先進国だったのかもしれません。でも、団体旅行って、帰ってきてから考えると、何も覚えていないってことがよくあります。あれは人を頼っているから頭を使わずにすんじゃうでしょう。一番、怖いのは外国旅行の途中で団体から離れる時です。頭の切り替えがうまく行かなくって、自分の身を守る行動に出られなくなっていて、どきりとする場面を何回か経験しています。

 今朝の日経新聞は内閣府が近くまとめる「日本21世紀ビジョン」案で訪日旅行者数を現在の年間600万人から2030年には、4000万人に増加させるという目標を報じています。これは団体旅行抜きに達成できない数字でしょう。一度、団体旅行で来て事情がわかれば二度目は個人でという人もいるはずです。政府が思い描いたとおりになるとは限らないのですが。

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