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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

取材力の低下

2005年01月07日(金)

 3番目の理由に挙げた取材力の低下という事柄ですが、取材力が低下する理由は多様です。昨日の新聞に50年ぶりに国語力の調査をするという記事がありましたが、読解力が弱くなれば、当然、取材力も弱くなるわけで、これは取材力以前の問題。

 そういった取材力以前の問題もあります。テレビについてここ数年見聞きしたところから言うと、「下請け化」と言ったらいいのでしょうか?番組瀬作会社と放送局が分かれているというケースが多くなりました。放送局の時自社製作の番組ではなく、番組制作会社が製作した番組を放送しているのは、ドラマなどばかりではないのです。ワイドショーや報道番組でも番組製作会社は活躍しています。これが放送局に対して立場の弱い「下請け」になってしまうことも珍しくないようです。

 番組制作会社が単なる「下請け」にならないためには視聴率をとるという対抗手段が一番です。ニュースのワイドショー化と言われる現象の背景には、こうした番組制作のシステムの変化があったと言えるでしょう。
 また自社製作の報道番組の中でフリージャーナリストから提供されたニュースを使うこともあります。これもだんだん増えてきました。で、こうした「下請け」あるいは「外注」が増えると局内に現場を知らない管理者が出てきてしまいます。現場を知らない管理者というのは困ったことに新しい事態に対処できないことが多いのです。どなたか、こうした番組制作のシステムの変化について具体的に調べていただけるといいなと思います。これは放送局自体が自己検証することが望ましいのかもしれません。

 今回のインド洋津波は今までにない経験だったと言えるでしょう。単に甚大な自然災害だというだけでなく、国内の災害報道ではカバーできない外国の災害だったこと。邦人の被災者がたいへんに多く、また安否確認が困難を極めたこと。中東から北朝鮮に至る「不安定な弧」と呼ばれる新しい外交上の重要地域の中心地で起きたこと。タイのバーツの暴落から始まったアジア経済危機に見られるように、経済関係が緊密化していることなどの事情が加わっていること。こうしたタイプの災害は今までテレビというメヂィアが体験して来なかったものでした。そういう未体験の災害について、その重大さの判断が少し遅れたというのが、テレビ報道の少なかった理由ではないでしょうか?

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