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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

昼寝をする海

2007年03月08日(木)

 12月に有明海の岸を車で走ったときには、潮が満ちていましたが、今度は干潟が遠くまで現れていました。春の大潮の季節です。干満の差がいちばん大きくなるのは、お彼岸のころでしょうか?子供のころは家に潮見表などがあって、干満の差を気にしていましたが、このごろはすっかり鈍くなっています。干潟を「ガタ」と呼ぶのだそうです。

 潮が引いて、海の底の砂地には小波の模様が残っています。蟹がたくさん、横歩きをしていました。濡れた砂が日に当たると、磯臭さが一層ましてきます。有明海の干潟はかなりの広さで、どうかすると水平線まで干潟なのではないかと思われるくらいです。向こうに島原半島と雲仙が見えました。海苔がとれるのは、こうした干満の差が大きい海なのですが、諫早湾の干拓で、海苔がとれなくなったというニュースがあったのを思い出しました。有明海では、まだ海苔粗朶を使っていて、干潟の向こうに、粗朶が並んでいました。

 広い干潟を見ていると「海が昼寝をしている」ような気がしてきます。

青い海 青い空 青い麦

2007年03月06日(火)

 熊本に行ってきました。新聞連載「ジュリアおたあ異聞」の取材です。宇土半島から天草西海岸までをめぐってきました。ご案内いただきました熊本近代文学館の馬場さん、熊本日日新聞の勝木さん、それに熊本にお帰りになっていた伊藤比呂美さん、インスピレーションにあふれたガイドをしていただいて、ほんとうに感謝しています。どうもありがとうございます。

 今回は挿絵を描いていただく宮本恭彦さんもご一緒しました。宇土から大矢野のあたりは「浦賀や田浦にそっくり」とおっしゃっていたので、ほんとうれしくなってしまいました。三浦半島は開発が進んで、昔の内海の眺めは少なくなりましたが、それでも、天然の良港であった地形の名残はあります。宮本恭彦さんはずっと三浦半島の田浦に御住まいです。「なんだかうちに帰ってきたみたいだなあ」という感想は、私が最初に大矢野に案内してもらった時と同じでした。

 宇土半島は麦の葉が伸びる季節。「ジュリアおたあ異聞」の前半の重要人物である小西行長は宇土の領主だったのですが、五島にいた松浦一族と組んで小麦粉の貿易をしていたようです。小麦貿易の利益が宇土城建設の費用になったと推察されています。宇土から天草は海のいろいろと言いたくなるくらいに、様々の海の様子を見せてくれる地形をしています。

 宇土半島の北側は干潟で有名な有明海、南側は不知火海、有明海と不知火海の間に私や宮本さんが「浦賀にそっくり!」と思った島と入り江の多い海域があり、天草に渡って西海岸まで出れば、そこは東シナ海です。伊藤比呂美さんは大波がじゃばんじゃばんする外海の眺めを見たいのだそうですが、どういうわけか、伊藤さんが東シナ海の見える場所まで行くと、かならずベタナギになるのだと言ってました。海の神様か、空の神様か、どちらか判りませんが、伊藤さんには親切? なようです。伊藤さんのおかげで青空の広がるベタナギの東シナ海を見ることができました。

もう桜?

2007年03月02日(金)

 娘が伊豆に旅行しました。そのときの写真を見せてもらったのですが、あちらこちらで桜が咲いています。伊豆にはもともと早咲きの桜がありますから、そういう酒類の桜ではないかと思ったのですが……。東京都内でももう桜が咲いているところがあるとゼミの学生が話していました。ほんとうにもう桜なに?わが目で見るまでは信じられない話です。

 ここ数日、寒い日が続いています。例年にくらべればたいした寒さではないのですが、足が冷えてスリッパが欲しい寒さです。以前は靴下が嫌いで、冬でも素足でしたので「見ているほうが寒い」と年配の人からしばしば言われました。その気持ちがわかるようになったんだなあって「スリッパが欲しい」と思いながら、ちょっとにやにやしています。

 でも、デパートの売り場は春の装いで、軽くて、気持ちがいいスリッパなんてもう売ってないみたいです。ああ、スリッパが欲しい。

フラッシュメモリー

2007年02月24日(土)

 1ギガなんて単位の情報が入る入れ物を個人が扱うようになるとは思いませんでした。フラッシュメモリーを豆蔵さんに教えてもらって買いました。もちろん壊れちゃったパソコンから、データを移動させるためです。

 「ぶしゅっとさせばいいだけです」というので、ぶしゅっとさしてみました。これが何かに似ている? はてなんだろうと考えていたら、植木鉢にさして使う植物の活性剤に似ているのです。で、その活性剤のかたちは病院で使っているアンプルの形をしています。アンプルは細長い首がついたガラス瓶で、首のところをぽきっと折って使います。

 でまたまた連想はとんで、昔々、母がよくアンプル型の風邪薬を飲んでいました。こちらは茶色い瓶。ガラスの首をぽきっと折ると、なんだか普通の錠剤の風邪薬よりも効き目がありそうな気がするのです。副作用があるとか、何か良くない理由で市販されなくなりました。で、フラッシュメモリーですが、パソコンにぶしゅっと挿すのではなくて、頭にちょくせつぶしゅっと挿すとか、肩のあたりにぶしゅと挿すなんてことができないかなって……まあ、出来なくてよかったのでしょう。

 (以下、ひとりごと)昨日、久しぶりに高速道路を車で走ったら左足の腿が痛い。ああ、運動不足だ。車を運転して筋肉痛になるなんて初めての経験。

猫背

2007年02月21日(水)

 ノートブックパソコンを使っているとなぜか猫背になります。それから字が小さい。目がかすんでくる。でもなぜかノートブックが使えるってうれしいなあとか思っているのは、昔、タイプライターにあこがれたから。見栄で英文タイプを練習したことがあるんです。こんなことで役にたつなんて思わなかったなあ。

 それで猫背です。もともと猫背だったのを、直したのにこれじゃあ、また猫背になっちゃう。やれやれ。万年筆はかならず二本持ってました。だからパソコンも二台持ってないとまずいなあと思うようになりました。ほんとうはデスクトップを二台、欲しいんだけど。置く場所がないからなあ。ぶつぶつ。ぶつぶつ。

昨日からそういうわけで

2007年02月19日(月)

 豆蔵さん、昨日は遅くまでありがとう。この次はかならず池袋の服部珈琲舎でコーヒー飲みましょう。それから「私をスキーに連れていって」じゃなくて、私を秋葉原につれていってください。牛丼でもハンバーガーでもいいから、腹が減ったじゃなくて、デスクトップPCじゃないと異常に肩が凝って仕事にならないのです。

 というわけでデスクトップがいかれてしまったので昨日から大わらわで、あっちこっちいじっています。で、気づいたことはペンに書き味があるように、キーボードにも叩き心地があるんだなあってことです。昨日から3台のパソコンで三つのキーボードをたたき比べている状態でしゅ。なんだ、こりゃ!どうしても赤ちゃん言葉になっちゃうぞ。わああああ。どうしようか。

豆ちゃん助けて SOS

2007年02月19日(月)

 昨日はどうもありがとうございました。しかしダイナブックはメールの受信はできっても、送信はできません。このページはうちにもともとあったノートブックパソコンで打っています。このノートブックはなぜかメールの送受信はできないのです。

 ああん、どれも帯にに短したすきに長しで、どうしいよう(泣、泣、泣、涙、涙、涙)豆ちゃん助けて!


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(豆蔵追記)
 メールの設定はその他の設定をいじったり要らないファイルを削ったりですっかり忘れておりました。
 プロバイダのページから、送信メール用のサーバーを調べて、記入すれば解決するように思います。
 あとはエラー番号を調べて、エラー番号で検索をかけて……といった按配でしょうか。
 またお邪魔した方が早いかもしれない!

姜英淑さん

2007年02月15日(木)

 ソウルから作家の姜英淑さんがお見えになりました。今年の韓国日報文学賞受賞です。日本には7月までご滞在とのことでした。お子さんもいる女性作家です。

 日本の海辺の地方でしばらく暮らしてみたいというご希望ですが、さて、海辺と言われても考えてみると日本の海辺と言っても北は北海道から南は沖縄まで、同じ海とは思えなくくらい違いがあるってことに気付きました。もっとも私は相模湾もしくは東京湾がよろしいと申し上げておきましたが。

 17キロ?もダイエットをなさったとのことで。3年前にソウルをお目にかかったときよりもずっとほっそりしていました(ああ、うらやましい)いったい何をなさったのでしょうか?ってお聞きしたらダンベル体操ですって。そんなに効き目があるのでしょうか?以前から勉強なさっていた日本語も日常生活に不自由がないくらいに上達していました。それに引き比べ私の朝鮮語は3歳児で止まったままだし……。姜英淑さんがご滞在のうちに少し上達するかしら?

 久しぶりにお目にかかって、懐かしい人のうわさ話をあれこれ。詩人のファン・ジフさんは文化庁の長官くらいの(役職名は日本と違うので)偉い人になってしまったというし、15年前ほどは、韓国作家にしては珍しい茶目っ気のあるチャン・ジョンイル氏は大学の先生になっているとのことでした。チャン・ジョンイルさんは15年前は韓国の一番の若手作家で、シンポジウムの時。文芸評論家がチャン・ジョンイルさんに質問をしたら、それには答えずに、会場から脱兎のごとく逃げ出してしまったということがありました。「逃げた!逃げた!」と質問をした文芸評論家のキム・チュエンさんが呆れ顔だったのをよく覚えています。いわゆる新世代(シンセディ)作家として一番早くに出てきた人でした。
 大学の先生になっても、学生のつまんない質問をさらりさらりと交わして、教室から脱兎のごとくに逃げ出しているのかしら?
 冬の青森でご一緒して、積もった大雪をみて「オールモスト、グロテスク(笑)」なんておしゃっていたファン・ジフさんがそんなに偉くなられては、簡単にお目にかかりたいとお願いするのはちょっと気が引けてしまい、寂しい気がしました。

 そんなこんなを、鳥鍋を突付きながら、いろいろと話し込んでいる間に東京は春の嵐が通り過ぎていました。

グラッパ

2007年02月12日(月)

 グラッパはワインを造った葡萄の絞りかすから作る蒸留酒だと聞いています。粕取り焼酎ってのがありましたけれども、あれみたいなものですね。あんまり上等とは言いがたいお酒ですけど。

 ええと二日酔いの原因というか主因はたぶんグラッパだったと思います。ほかに考えられない。ブランデーみたいに樽で寝かせたりしていない透明で、喉をつんと焼くみたいな感触があるのを飲んじゃいましたから。で、家に帰るまではしっかりしていた気がするんだけど?他人(ひと)から見たらそうじゃないのかなあ?なんだか不安。家に帰るまえに小説現代の編集部に電話しているし……。家に帰ったらおもしろいくらいに酔っ払っていました。

 思ってたよりも酔っ払っていたということが去年の秋くらいから、何度もあります。朝、おきて、ええっ、こんなに酔っ払っていたのかな?ってびっくりするくらい酔いが残っているのです。これがちょっと気持ちよくって、なんだかお得(?)な感じがする。本当ならもうとっくに覚めちゃっていいのに、おまけをもらったような感じですね(笑)それで午前中をぼうっと過ごせれば文句はないもないんだけど。そうは行かない!なんでこんなに酔っ払っているんだ(泣)って具合に家を飛び出さなくちゃならないことが多くて困っちゃいます。

 透明なグラッパを細長いグラスで飲んで、陽が沈んで行くのでもぼんやり眺めていたいなあ。今まで飲んだグラッパでいちばん美味しかったのは、ミラノの駅のワゴンで売っていたやつ。小さな瓶で、列車の中でラッパ飲みしたんですけど、さっさと眠れちゃいました。それで列車に揺られながら眠っていると胃のあたりが暖かかったの。

雪の降らない東京

2007年02月11日(日)

 一週間のご無沙汰でした。こんにちは。ずっと飯田橋に泊まっていました。あったかい冬です。なんだか4月くらいの陽気という日もありました。こんなにあったかいのに、なんで入試なんかやっているんだろう?ってへんな感じです。飯田橋の界隈は法政大学と理科大学の受験者で大混雑ですが、入試の時期の寒々しい景色というわけではなくて、もうすぐ桜が咲きそうなゆるみ方です。そういうわけで、今年の東京は「初雪はなし」という発表を気象庁がしていました。

 でもまだ雪が降らないと決まったわけじゃありません。太平洋岸を進む高気圧がぼあんとした春の雪を運んでくることがあるかもしれないなあって、予想しています。それにしても、へんてこりんな具合に寒くない冬です。この十年の間に卒業式に桜が咲くのは珍しくないということになってしまいました。やっぱり気象は変化しているみたいです。霜の朝とか、霜柱を踏むなんてこともなくなってしまいました。

 昨夜、久しぶりにお酒を飲みました。カンパリをソーダで割ったのを一杯。それから赤ワインをボトル半分くらい。最後に極め付きのグラッパを。そうしたら、目の前がぐるぐる回るくらい酔っ払ってしまいました。朝起きて、ああへんなことを言ってないといいなあってやや不安。なんかねえ、忙しいと言いたくないんですけどねえ、でも忙しい一週間でした。

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