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『鋼』考

2014年09月15日(月)

『鋼の錬金術師』をとうとう足りなかった巻までぜんぶ買い尽くし、読みつくした。今まで読んでなかったのが口惜しい。そもそも少年漫画、弱い分野なのだ。戦いばっかりで女観はばかばかしくて。それがこないだトメに勧められ、トメにBookOffであるだけ調達してこさせ、読み始めたらのめりこみ、残りをネットで買い集めた。読み進めるにつれ、どんどんすごくなった。まず、戦場の描写がただごとではない。まるで経験したような、リアルな、こまかいところまで。『凍りの掌』や『紫電改のタカ』を思い出したくらいである。と思っていたら、単行本の袖のところに、描くにあたって第二次世界大戦の戦争体験者に話をきいたと書いてあった。それから、生き死にの描写が、ただごとではない。これは同じ作者の『銀の匙』や『百姓貴族』でじゅうぶん伝わっていたが、こんな早くから展開していたとは。しかもところどころに挿入される日常的な風景、とくに人と動物の生き様に生活感あり、異様に力強く迫ってくる。リゼンブールの羊祭りの風景や興奮した馬の様子など、その生活感から生き死にを導き出す方法には『アニマの鳥』を思い出したくらいである。そして、これはトメの勧めるひとつの理由でもあったが、女の描き方がハンパなくイイ。ヒロインのウィンリィこそ、待ってるだけで物足りないが「まあ、少年漫画だから」(とトメが言ってた)しかたないんだろう。しかし、ホークアイもイズミもアームストロングもすごい造形、とくに17巻のアームストロング少将がレイブン中将に手を撫でられて「ぶった斬ってしまいたい!!!」と呪うところは圧巻だった。イズミの商売は「肉屋」であるが、このことばについては、チェックされて書き直すことをすすめられた経験がある。「精肉業」ならOKだと言われた。今はそんなことはないのか。この頃はそんなことはなくなったのだろうか(この漫画は2001〜2010)、そして登場人物は心にも身体にも障害を持つ人間ばかりであり、『ベルセルク』もこんな設定だけどもっとリアル。ある意味『リアル』のリアルさにすごく近い。

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