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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

どきどきした

2012年12月21日(金)

夕食のあとで、洗濯機とかいろんなものが置いてある物置部屋に入ったら、床の上に殺鼠剤の箱がかじられて中がからになって落ちていた。きょうはバターミルクに漬けといた牛肉のかたまりを拭くのにふきんを使って、それをバケツの中に放り込んであった。そしてそれをルイがみつけてしゃぶってるのは知っていたのである。すわ、ルイ、殺鼠剤中毒で一巻の終わりかとはらはらどきどきしながら大騒ぎして、S子やつれあいやトメやみんなに相談してまわったところ、ルイじゃないんじゃないかとみんなが言うのである。まず、殺鼠剤食べたのならもう症状が出ていていい頃だし、箱のかじりかたがルイにしてはおとなしいし、箱の中に袋入りで毒が入っていたのだが、袋はかじられて(それはあきらかにねずみのしわざだった)毒はぜんぶ食べられていたし。棚から落ちたらしい毒の箱は、もう何年も前に使ったものだ。棚の上ならいいだろうと置いておいたのが、棚がずれて、傾いで、落ちたらしい。夕食前にはなかった(あたしが洗濯機を回しにいった)。夕食中はルイはあたしらが牛肉たべてるので落ち着かずにずっと見ていた。夕食後は少し牛肉をもらったので、さらに落ち着かず、ずっとあたしの周りをうろついていた。その物置部屋に何回も出たり入ったりしていたが、それはたぶん、味をしめた牛肉の血のしみついたふきんのニオイにひかれてだろう、そっちに気を取られて、殺鼠剤に気がつかなかったはずだ。もし殺鼠剤を食べはじめていたら、ルイのことだから、食べ終わるまで出てこなかったはずだ。しかしほとんどの時間、食卓のまわりをうろうろしていたのだ。棚をはずして、見てみると、そこにおびただしいねずみのふんとかじられた紙くずが。そういえば、何匹も死んだ、ねずみが。台所に飛び出してきて死んだのもいる。毒のことなんかすっかり忘れていたので、いったいなぜ死んだのかと不思議に思っていたのが2年前だ。それからも、ねずみが死んだニオイが、何回かオーブンの後ろからただよってきて、じっさい、こないだ、台所の改修したときに、工事の人が、オーブンの後ろにねずみの死骸が何匹分もあったといっていたのだ。つまり、なんにもなかったのだと思う。推測にしかすぎないが。でも、ルイは、いま、ここで熟睡しておる。

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