中沢けい公式サイト 豆畑の友
ホーム プロフィール・著作リスト 中沢けいへの100の質問 中沢けいコラム「豆の葉」 お問い合わせ
中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

仙台堀を南へ

2010年01月13日(水)

 建築家の鈴木隆之氏の事務所に行きました。例の計画です(笑)。鈴木さんの事務所は深川のお不動様のすぐそば。下町です。

 東京は西のほうは、イタリア料理やら、フランス料理がおいしいけれども、東はなんと言っても和食、いや、おでんにすきやき、やきとりにうな重、どじょう鍋、さくら鍋、それから忘れてならないおすし、かわったところではやまくじら(いのしし)なんて、ほんとに街にはおいしいものがごろごろという感じです。あと、豆菓子屋さんがあったり、人形焼き屋さんがあったりとお土産も豊富。西高東低の冬型の気圧配置ならぬ、西洋東和の東京の食べ物事情です。

 それで鈴木さんからうな重をごちそうになりました。ごちそうさま。いつもは麦とろなんだけど、麦とろ屋さんが月曜日で御休みしてました。成人の日だったので、晴れ着姿の人も多いっていうのに、ちゃんと定休日をやっちゃうところが下町です。それから、清澄公園脇のよーがんれーる本社というよりも「ばーばぐーり」と言ったほうがいいのだけど、そこの初売りを覗きました。「ばーばぐーり」の裏は仙台堀。仙台堀のふちをあるいて南の木場方面へ。

 仙台堀は隅田川に流れ込む川ですが、川岸は桜の並木に柳の並木。いろいろな形の橋が架かっています。もちろん桜はまだ冬の姿。川の流れは冷たい緑色。そこに鴨が遊んでいました。春になったらさぞ見事な眺めでしょう。木場まで歩いて、木場公園の東京都現代美術館へ。チケット売り場は行列が出来ていました。私が見たのは
「ラグジュアリー展」。17世紀からのオートクチュールの歴史を踏まえた服飾の展覧会です。

 ええと、いまさらと呆れられそうですが、貴婦人を描いた絵画を見ているとスカートは扁平に見えるのはなぜだろう? と前々から疑問に思ってましたが、あれは実物が扁平だからなのかと、実際の服を見て納得。スカートは左右に張り出していて、円錐形に膨らんでいるのではないのです。円錐形に膨らむのは19世紀になってから。そんなこと知っているわいって言われそうですけど、私には発見でした。それから、19世紀までの服は後姿が美しい。後ろから見られることをすごく意識している服です。背中には裳がついているの。それで裳すそを引くようになっている。で、男性も女性と同じように華やかで、華美なほど。19世紀になると男性の服の展示がなくなってしまうのはきっとスーツが登場したからに違いありません。

 で、どこかで男性の服飾の展覧会ってないかしら? っていつも思ってます。私の父は(貧乏でしたけど)モーニングを持ってました。式服です。でもイブニングはもってなかったの。だって庶民だから、夜会はないので。息子は燕尾服を持ってます。これは音楽会のステージ用。あと、小説を読んでいるとフロックコートってのが出てくるけれど、フロックはほかのコートとどのように違うのだろう? そういうのを系統的に見せてくれる展覧会があれば、すぐに出かけてゆくのだけど。

 道端で出会う新成人の、とくに男性の服装は、これまた別の意味での展覧会でした。まさしく「生きた」コンテンポラリーアートの展覧会でした(笑)。

↓前の日記 / 次の日記↑

   
談話室 リンク集「豆の茎」 メルマガ「豆蔵通信」 サイトマップ