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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

アンチ左翼とアンチリベラル

2004年10月03日(日)

 フィリップ・ロスの「ヒューマン・スティン」を読むと、アメリカがアンチリベラルの心情にとらわれているのがよく解りました。日本のアンチ左翼とパラレルな現象でしょう。

 理想主義に極端で急進的な情熱が加わったあとにはこうした冷淡な現実主義がもてはやされるのでしょう。理想だけ残して、急進と極端を止めるというバランスはなかなか取れないのでしょうか?

 ところで、捕鯨が国際問題化するたびにアメリカは「白鯨」をどうやって生徒や学生に読ませているのだろうと不思議に思っていました。どうやら、古典教育というものをかなり捨ててしまったようです。今では「白鯨」のタイトルさえ知らない中学生がいるという教師の嘆きが「ヒューマン・スティン」の中に出てきました。

 日本も欧州もアメリカの教育学の影響を受けて古典文学教育を縮小しました。過去の価値観からの決別という意味もその縮小には含まれていたのですが、これをやると価値観そのものが失われてしまうという現象が起きることは勘定されていなかったようです。

 さらに言葉の意味を重層的に奥行き深く取るという訓練もできませんし、意味を保証する審美眼も育たないということも考えなくてはなりません。

 どうりでアメリカ大統領選で幾らケリーががんばってもブッシュ優勢を復すことができないわけです。
アンチ・リベラルの聴衆の耳にはケリーの言い分は七面臭い奇麗事を言っているようにし響いていないらしい様子です。

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