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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

木枯らしの歌を思い出したくて……

2006年11月14日(火)

 なんか木枯らしの歌があったなあと、考えているのですが、思い出せそうでなかなか思い出せません。

 コートの話の続きです。こんな木枯らしが吹き始める季節に新宿のサブナードで臙脂色のコートを一着買いました。気まぐれだったので、後からサンローランのものだと知りました。というか、会計の時にあんまり高いのでぎょっとしたのです。でも、ものすごく気に入っていたので、やや(値段には)諦めの心境で買ってしまいました。臙脂色で、やはり腕のしたあたりの線で切り替えが入っていました。切り替えのしたにはたっぷりのタックがとってありました。背中のタックのとりかたが美しいのと、臙脂色の生地が玉虫で、光の具合で黒く見えたり赤が勝って濃い赤に見えたりしました。袖の肩のところにもいくらかピンタックととってありました。ピンタックでぎろがった袖が袖口のカフスできゅっと締められるという形でした。丈は膝丈。

 このコートで感心したのは、袖を通さずに肩にかけているときの広がり方の美しさでした。外国映画を見ていると肩にコートをかけているシーンをみかけますが、なるほど、肩にコートをかけるためにはそれなりの設計がいるのだと納得したものでした。高校生の時から着ていた紺色のハーフコートをお別れをしたのはこの頃だったかもしれません。臙脂色のコートを気まぐれに買った翌年には上の息子が生まれましたから、もう25年も前の話です。

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