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こんなことができちゃうんだ。
2006年10月01日(日)
長谷川 郁夫 / 河出書房新社 Amazonランキング:位 Amazonおすすめ度: 「表現者」で著者の長谷川郁夫さんにインタビューしました。アマゾンにリンクできるブログを見つけてやってみました。こんなことができちゃううんだ! 第一書房創業の頃、皮装の豪華本で萩原朔太郎や堀口大学の詩集を作った長谷川巳之吉が、日中戦争勃発の頃から大川周明やヒットラーのほんを軽装本で出すようになるのは一見、矛盾しているように感じられるかもしれませんが、もともと幻視者(ビジョニスト)的な性格があった人物としては、ある意味、当然の帰結だったのかもしれません。いずれにもヨーロッパの模倣が含まれているという共通点が、それをよく物語っているように思えます。詩人が見た幻は皮装に包んで限られた人々に届け、国民が見た夢は軽装のペーパーブックで届けたというのは出版人としては、まことに正統な感覚であったと言えるでしょう。前者は選ばれた読者のためであり、後者は万人のためのものだからです。 高級ブランドの販売と薄利多売の大衆的商品の販売の仕方の違いです。それは同時に植民地主義にたんを発した軍事拡張と軍備増強がきわめて大衆的な政治潮流であったことを意味しているように思えます。 巳之吉は第一書房が最盛期を迎えた昭和19年に突然、廃業します。「表現者」のインタビューを終えてから著者の長谷川郁夫さんに聞きました。「巳之吉は昭和19年の正月もしくは18年の年末の時点で、日本の敗戦を見通していたかしら?」「それはそうだろうけど、それは書かなかったの」という返事でした。 「美酒と革嚢」は資料をして語らしむるという姿勢の評伝ですが、あえて書かれなかったことがたくさんある本です。書かないことによって語られることがたくさんあると言ってもいいでしょう。詩人の夢が国民国家の空想的な夢想に大変化をしてゆくさまは、書かれずに語られたことのひとつでしょう。
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