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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

歌舞伎座立ち見

2006年08月10日(木)

 台風が太平洋の沿岸をなめるように進んで銚子沖に去った日の夕刻、歌舞伎座の立ち見に行ってきました。8月の歌舞伎座は三部制。勘三郎が出ていないのがちょっと寂しいのですが。歌舞伎の話ではなくて立ち見の話です。8月は海外からの観光客が多くて、立ち見もやっぱり外人さんだらけ。

 一幕800円なんので、日本のお芝居をちょっとだけ見ようというにはちょうどいいのでしょう。私も時々、海外からのお客様を案内したりしますけど。それで、若いお嬢さんが20人も外国人を連れて、チケットを買う行列に並んでいました。立ち見は予約もできないし、チケットはひとり一枚しか買えないので、並ぶよりほかに方法がないのですね。で、この日は、いつも立ち見の行列ができる場所は、3階席のチケット引き換えのお客さんの行列ができていて、立ち見の行列は4階に通じる階段のほうに並んでいました。

 で、私の前にはやはり金髪、茶髪、青い目の外国人のお兄ちゃんが4、5人並んでいたのですが、この人たちは巨大なピザを持参していました。いったいどこでアメリカンサイズのピザを買ったのだろう?しかも焼きたてでチーズがとろけているやつでした。で、立ち見のチケットが売り出されるのを待っている間に、この巨大ピザを食べていたんです。階段の踊り場なので雨にも濡れないし、下は絨毯だから旅行中の経費節約としてはなかなかです。なんだか感心するようなたっぷりでした。

 こんな感じだから立ち見の4階席は、笑う場所が3階までの客席とは違うのです。で、驚いたのは上海にいるはずの中国人の知り合いにばったりであったところです。親戚の男の子を連れて東京に戻ってきたばかりということでした。歌舞伎座って、思わぬ人にばったり出くわす場所でもあります。

 それで何を見たかというと、「里見八犬伝」です。かなり大急ぎの「里見八犬伝」でした。なにしろ短く切り詰めているから。

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