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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

ノ・ムヒョンの沈黙

2006年07月08日(土)

 5日早朝に鶴岡のホテルで、サッカーを見ようとテレビをつけたら、北朝鮮がミサイルを発射したというニュースが流れていました。それからあまり新聞を丁寧に読む時間がないので、ネット検索でニュースをあさっていたのですが、ネット上の記事を多いのは、イラクの開戦が迫っていた頃の2003年の記事です。その当時、北朝鮮はシルクワームという小型ミサイルを発射しています。そのイラクでは自衛隊の撤退が始まりました。砂嵐のためにいくらか撤退作業が遅れているようですが、7月中にはサマーワからの撤退を終了するようです。

 もともと北朝鮮の核開発ミサイル問題はイラク戦争開戦の時期とシンクロしてクローズアップされていたことを改めて思い出しました。こうした動きには、どの程度の「意図」が介在しているのからは、散発的なニュースをあさるだけでは理解できないところがありますが、まったく「意図」が働いていないとも考えられません。誰の「意図」なのか、どのような「意図」なのか。そこまで推察はできませんし、あるいは神の「意図」、つまり無神論者なら「偶然」とか「歴史の悪戯」と呼ぶようなものなのかもしれません。

 朝鮮日報は韓国のノ・ムヒョン大統領が沈黙しているわけを探る記事を書いています。ちょっと目を引いたのは今年の3月に北朝鮮国内でクーデターや内乱などが起きた場合を想定した米韓の演習を行われている記事があったことです。これは「内乱」や「クーデター」というキーワードで検索したところ、引っかかってきた過去の記事です。米韓それに日本はおおよそ、そうした「不測の事態」が起きた場合の対処を考えているようです。昨日の夕刊フジは中国が中朝の国境を閉鎖し、石油のパイプライン6本のうち5本を閉じたことを報じています。これも2003年のシルクワーム発射の時に中国がパイプラインの事故を理由に石油の供給を止めたのと同じなり方なのですが、その時以上に緊張したものを感じます。ですから国連での議論の方向には強い関心を抱いています。

 日本のテレビコメンテーターは過去の事例をもとにパターナイズされたコメントを出す傾向があります。北朝鮮について言えば、パターナイズされたコメントに多少の嘲笑の色が加えられることが多いのですが、おきている事象は過去の例とよく似ていても時間の経過とともに事象の意味が変わるという点に留意したコメントは、ほとんどありません。北朝鮮については無用なあなどりや不愉快なほどのあざけりが加わるので、聞くに堪えない場合すらあります。そのような軽佻浮薄なムードの水面下で何か重大なことが進行しているようです。ノ・ムヒョンの沈黙がそれを雄弁に物語っていると考えるのは、あまりにも小説家的想像力だと言われてしまいそうですね。

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