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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

建物の運命

2004年09月11日(土)

 昨日、書いた不思議な運命の建物の話の続きです。今は葬儀用のセレモニーホールになっているある建物は、7、8年も借り手がなかった挙句に、銀行の差し押さえられたということでした。その建物はT字路の突き当たりにあります。

 T字路はかなり大きな道で、信号が無ければ交通にも不便が出る場所です。駅からは近いのですが、T字路の突き当たりでは信号の関係で、建物の前に車を止めたりはできません。ここはもともと和風の個人住宅が建てられていたそうです。そのもそれほど古い建物ではなかったようで、個人住宅が取り壊された時には、その家を建てた大工さんが涙を流して見詰めていたという話でした。

 木造の個人住宅をわざわざ取り壊して、一階を貸し店舗、二階を貸し事務所に、3階に住居を作るという鉄筋コンクリートのビルを建てたところ、7、8年も借り手は一人も現れず、とうとう銀行に不良債権の担保物権として処理されることになったようです。その間の銀行は利子をとっていたのでしょう。それにしてもなぜそんな立地の悪いところに銀行はお金を貸したのかと不思議になる話です。

 日本じゅうのあっちこっちでそんな運命の建物を多くの人が目にしているのだろうと思います。建物には人の運命も付随しているわけですから、ため息のでる話でした。葬儀用のセレモニーホールはそんな立地の悪いところでもやって行けるというのも、なんだか複雑な心境を呼びます。こういうのをバブルの遺跡というのでしょうか?

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