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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

冬眠から春眠へ

2006年03月07日(火)

 東京はうらうらとした暖かいお天気がづついています。昨日はお買い物。春用の洋服を少しまとめて買いました。(無駄使いだ!という子どもたちの声が聞こえそうですが)それから映画を観ました。街歩きをしていてもなんとなくぼんやりとして、春眠の延長の気分です。

 映画の予告編でやっていた「ヨコハマメリー」というドキュメンタリー映画を観たくなりました。横浜の伊勢崎町にいた街娼の行方を追う映画のようです。メリーさんと呼ばれた彼女は84歳で亡くなったとのことですが、子どもの時に映画に観に行った伊勢崎町の雰囲気などを思い出せそうです。予告編の文句がおもしろくて「奇跡の上映」なんだそうです。小さな映画館でもドキュメンタリー映画が商業映画館にかかるというのはやはり「奇跡」に近いものがあるのかもしれません。

 どうやらこの映画では「伊勢崎町ブルース」を渚ゆうこが歌っているみたいです。青江美奈よりも軽い声でし高い声なので、なんというのか、言うに言われぬ違和感がある予感がします。新宿の大ガードのわきに青江美奈や五木ひろしの似顔絵が大きく描かれたキャバレーの広告が出ていたのも今は昔の話になりました。

 今、私が住んでいる家の周囲ももとはアメリカ軍の朝霞キャンプがあったので、かなり高齢になった街娼がいるという話を聞いたことがあります。高校生の頃からずっと声をかけられ続けたという近所の旦那が「なんだかもう意地としかいいようがないよねえ」とため息をついていました。伊勢崎町と違って、このあたりはもともとは農家ばかりですし、今は典型的な郊外の集合住宅が多い地域になっていますから、横浜のメリーさんみたいな物語もなく、いつのまにか街から消えてしまったのでした。街道に沿った古い床屋さんや種苗屋さんが消えた頃に、姿を見なくなったような気がします。

 冬眠が春眠に切り替わる境目で、なんだかうまく言えないことをうらうらと考えています。

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