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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

つた温泉に行くことにした

2006年02月20日(月)

「どこに行くんだって?」
「だから蔦温泉」
「それってどこ?」
「十和田の奥のほう、八甲田山の中腹」
「それって東京からどのくらいかかる」
「たぶん、午後の仕事が終わってからじゃあ電車はないよ。新幹線で八戸まで行かなくちゃいけないんだから」
「え、青森なの?新幹線なの?小田急じゃないの?」
「箱根湯本じゃないんだから」
 地理音痴のともだちと上記のような会話を交わしました。どうも東京で午後の仕事を終えてから遊びに来る気になっていたらしい。
「それでいつ行くの?」
「来週」
「ひとりで行くの?何をするの?」
「ひとりでお風呂で寝てくる」
「お風呂で寝るの?」
「うん。お風呂場にお湯が流れていて、寝ていると背中がぽかぽか気持ちがいいの」
 真冬の蔦温泉なんか誰もいないと思っていましたが、そうでもないのです。この間、乳頭温泉で雪崩がありましたけども、あのときも客さんはけっこういました。
「ねえ、疲れてない?」
「うん、ちょっとくたびれているんだけど」
「温泉に行くっていう妄想だけで予約しちゃったんだ」
「妄想じゃないよ。ちゃんと予約したんだから」
「箱根湯本にしたら、そしたら小田急で行けるよ」
「やだ。だって八戸で烏賊買ってくるんだもん」

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