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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

郵政民営化の「夜明け前」

2005年08月05日(金)

 歴史は繰り返すのかどうか?郵政民営化を巡る争いを見ていると、妙なだあと思うことがあります。

 今の首相のお祖父さんの小泉又次郎は慶応元年の横浜市生まれ(当時の武蔵国久良木郡金沢)とび職人の息子で、横須賀で請負師になった人物です。嘉永6年に黒船がやって来たことから、運命が開けた一族だと言ってもいいでしょう。で、郵政民営化法案反対の筆頭が綿貫民輔氏で、こちらは富山県の神主さん。現職の宮司です。かつては、運送会社社長でもあったのです。

 毎日、新聞を読んでいると島崎藤村の「夜明け前」のアレゴリーを読んでいるような気分になって来ます。

 日本各地にいた豪族や武士が、徳川の御世が始まる時に帰農して、庄屋や名主あるいは問屋になり、語維新で今度は郵便局や学事係になったものというふうに、中世から700年くらい続いてきた流れがあることを島崎藤村は自身の一族をモデルに「夜明け前」で描いています。街道筋ではこうした人々が人の往来、手紙や荷物の輸送などの世話をしていました。

 藤村の一族に限らず、全国津々浦々にそうした家があり、今でも特定郵便局を営んでいたりしているのでしょう。そうした家というのは近代工業化によって生まれてきた中間所得層とは別の意味と意義を持った中間層を形成していました。

 これを仮に旧中間層と名づければ、この旧中間層が存在したために日本は比較的スムーズに近代化をやりとげたと考えることができます。郵政民営化で、その旧中間層が消えてしまうのを怖れるのは、ある程度もっともなことに思えます。私は郵政民営化賛成ですが、反対派にはそうしたところを、もう少し丁寧に説明してもらえないものかと思います。

 こういうことを書くときは「です・ます」体は不便ですねえ。なぜか、この欄はあまり深い考えもなく「です・ます」体を使ってしまいました。時々、後悔してます。

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