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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

みせしめ

2005年05月07日(土)

 中学生になったばかりの甥っ子には小学校3年生の妹がいます。伯母さんの私からみれば姪っ子。そして甥っ子と姪っ子のお母さんのほうのおじいちゃんは畑作りの名人。我が家でもおいしキャベツや大根、さやえんどうなどたくさんお野菜を頂戴しています。

 今、畑はいちごの収穫の季節。姪っ子はおじいちゃんの畑へイチゴ狩りに行きました。でも畑のすみには、なんだか茶色くなった鳥がつるされていました。おじいちゃんから見れば、この鳥は畑を荒らす大悪党です。で、姪っ子はそれが気味が悪いので、そっちのほうには近づかないようにしてイチゴを採ったという話を詳しくしてくれました。

 で、彼女はちょっと考えこんで「ええとね」と首をかしげて、慎重に「みせ・・・」これで良かったんだっけという顔をして「しめ」と、覚えたばかりの言葉を発音しました。その仕草がかわいいのと、小さな唇から飛び出した「みせしめ」という言葉が残酷なので、周囲で聞いたいた私たちは思わず笑ってしまいました。

 畑につるしてあった鳥が怖かったという思い出と一緒に「みせしめ」という言葉を覚えたのでしょう。こんなふうにして、人間はいろんなことを感じて覚えて行くんだなと、伯母さんはなぜかひどく感心してしまいました。優しいおじいちゃんも畑を荒らす鳥は許さないこととか、残酷だけど、そうしないとおいしいイチゴはみんな鳥に食べられてしまうこととか、そのほかいろいろと少しづつ解って行くんだなあと、なぜか納得の伯母さんでありました。

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