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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

あおい島バナナ

2012年09月03日(月)

 先月、那覇からソウル・仁川へ飛んで、1ヶ月ぶりの那覇でした。牧志の公設市場を覗くと、青いバナナがたくさん、並んでいました。写真は沖縄産の島バナナですが、フィリピン産の青いバナナもたくさん並んでいました。島バナナはフィリピン産よりも小さくずんぐらもっくらした形をしていますが、味はフィリピン産よりも甘みと酸味の混じりあいが絶妙とのことです。

 今頃がバナナの収穫期なのかしら?それにしても青いバナナばかりだと不思議に思っていたところ、与那覇恵子さんから「沖縄はお盆なの」と教えてもらいました。陰暦の7月14日、15日、16日青いバナナはお盆のお供え物に欠かせないそうです。青いバナナが黄色くなる頃、ご先祖様は「にらいかない」に帰り、お供えからお下がりの黄色いバナナと食べるとのこと。東京でお盆のお供えに使うほおづきも、青い実が熟して黄色くなるとご先祖様があの世から帰ってくるのだと言われていますが、バナナのほうがなんだか「おいしそう」な感じです。しかし、もともとの土地を離れて暮らす人にとってはお盆の先祖供養はけっこうたいへんです。

 従軍慰安婦のことで、韓国の若い世代が祖母の世代の「名誉回復を考える」ことに興味を持ったと書きましたが、先祖供養のことなどを考え合わせると、それはけっして理解できないようなことでもないような気がするのです。韓国は儒教の考え方が強いからだという説明も耳にしますが、それはそうかもしれませんが、同じような感覚を持っていたのに、先祖の土地から離れてしまった日本では「あんまり考えたくないこと」だったのかなと青いバナナを眺めていました。それで「昔の人のことは忘れるようにした」と、そんな気持ちの動きがあったのは想像できることです。

 9月8日は私の父の命日です。ここのところしばらくお墓詣りもしてません。弟任せにしてます。弟に聞いたらお寺さんがお墓をきれいにしてくれてあったとのこと。以前はお墓のお守りと言えば、誰も興味関心を持ってくれずに一人で孤軍奮闘しているような気になったこともありましたから、弟と弟のお嫁さんにすっかりお任せというのも「なんだかいいなあ」で肩の荷が下りたような感じです。もうちょっと涼しくなったら、房総半島先端のお寺に行ってこようかなと、考えつつ、つい青いバナナを買ってしまいました。黄色くなるまでに1週間くらいかかるそうです。

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