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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

黒塚、清経

2009年07月19日(日)

きのうは暑かった。午後3時になったら暑さもまさに極まって、お城の木々はおおいかぶさってくるし、光は強すぎて見えないほどだし、運転しながら、これはてんぷらだろうか遠火でローストされてるのだろうかとつまらないことを考えていた。段山(だにやまと読む)の能楽堂に、金春松融会の練習をみにいったのである。社会教育課のA山さんが誘ってくれた。数年前、A山さんに誘われて見にいった薪能であたしは能に出会った。それは「とげ抜き」に書いた。あれはほんとにありがたい出会いだった。ずっと前にかってあった謡曲集が、ずっと待っててくれたように感じたものだ。きのうのは黒塚と清経だった。テキストをみながら、聞いて観察するので、たいへん、たいへん、おもしろかった。謡というのはうただった。みんな歌っていた。そしてテキストにはちゃんとスコアが、つまり文字のわきにいろんな印がついており、それを読んでいけば、ちゃんと歌える、初見奏もできるかもというようなきっちりしたスコアだったが、やはり、間のとりかたなどは、かなり人によるので初見奏はむりでしょうということだった。
この時期、外には風が吹いて涼しい気持ちにときどきなるのに、家の中は閉塞的でじつに暑苦しい。そういう家なんかなけりゃいいのにといつも考えるものだが、古い能楽堂の木だけの建物はものすごく涼しかった。ところどころあけっぱなしなので風が通り、陰になってるので日差しは射し込まず、これなら平安時代の人々も(こないだ京都で御所を見学したのだ)戦国時代の人々も(きのうは「センゴク桶狭間戦記」を買った)室町時代の人々も、夏は空調なしで楽しくすごせたにちがいない。暗い室内から外を見ると光は実にとげとげしいくらいに明るかった。照葉樹がぎらぎらしていた。暗い室内で、だらだら汗を流しながらうたい、動く人々を見ていた。

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