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バクスバウム氏
2014年09月09日(火)
バークリーは学際的な学会で、心理学者や考古学者や民俗学者や科学者が入り混じり、発表はぜんぜんついていけなかったが、ディナーやパーティーはとてもおもしろかった。つれあいの妻と自己紹介しなければいけないのがいまいちおもしろくなかったのだが、おもしろい人たちがいっぱいいたから、まあヨシとしよう。いちばんおもしろかったのはバクスバウムさんだ。自己紹介しあってから、「あなたの名前、ドクタースースの『きみの行く道』の最後に出てきますよね」と言ったら、「なんで知ってるんですか?」(まあちょー有名な本なのだが)ときかれ、「だってそれ日本語に訳しましたから」と言ったらむこうもおもしろがって、いろんな話をしてくれた。ドクター・スースとは友人で、バクスバウムの名前をきいて、「バクスバウム、ビクスビー、ブレイ」と言葉遊びをしたそうだ。そこからあの有名な本の最後の部分ができたそうだ。しかもバクスバウム氏は、若い頃コーネル大学でナボコフの授業を取ったし、いっしょに旅をしたこともあるそうだ。それはロシア文学という授業だった。ナボコフは、なまりはあるが、かんぺきな英語を話し、なまりもそんなにろしあーというほどではなかったそうだ。そしてロシア文学では、ゴーゴリとプーシキンが好きでドストエフスキーはきらいで、トルストイはセンチメンタルすぎると評していたそうだ。次の年は世界文学で、おそらくフランス文学を取り上げたはずだが、彼は残念ながらその授業は取らなかったそうだ。バクスバウム氏は81歳の美丈夫で、ちょーかっこよかった。ああこの頃81歳なんて若いじゃんと思ってしまうあたしの感覚は何?? 『きみの行く道』(ドクター・スース作 いとうひろみ訳 河出書房新社)の最後のページのまさにバクスバウムさんのところ、あたしがいちばん訳に工夫を施したところだ。こんな工夫をしたんですよ、とバクスバウムさんに説明したけど、日本語を知らない相手に伝わったかどうか。
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