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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

母の夢

2012年05月16日(水)

その前に長い、意味のつながらない断片的な夢があった。それからA上さんとしきりにいろんなことを相談していた。あたしの事情を説明していた。「東京いくんですか、私もいきますよ」とA上さんが言った。で、いっしょにどことかに行こうという話になった。で、東京で、講演かなにかやって、A上さんに、じゃーまた、といってすたすた歩き出したら、すぐそこに子どもの頃住んでいた家があって、母が昔みたいに庭のゴミを竹箒で掃き出しているところに出くわし(そのゴミには濡れた黒い葉がいっぱい入っていた、これはきっときのうのへどろかいだし作業のせいだ)、「あらあんた帰ってきたの、おとうさんにお線香あげときな」といわれて、庭にぶらさげてあるお線香たてにお線香をともし、家の中に入っていくと、母は掃除しながらこぎれいに暮らしていて、父は、死んだばかりであった。あたしは一人になった母を案じているのであった。家の中はビニールがしきつめられて、改装中みたいだった。「あんたこないだいつ帰ってきたっけ?」といわれて、うーん、元旦かな、いや三十日だったかなと答えると、「ならいいんだけど、あんまり働いてばかりいるとそのうち倒れちゃうよ」といわれた。大きな冷蔵庫がなくなっていて小さな一人用になっていた。あけるとケーキがいくつも入っていた。こんなにケーキどうしたの?ときくと「M脇さんが持ってきてくれたんだよ、あんたが帰ってくるだろうって」。食べようと思って戸棚のガラス戸を汚しながらお皿を出したら、母は、あたしが汚すそばからそれをぴかぴかに拭き上げた。ルイは? ときくと「そこにいるよ」といわれて、気がついたらすぐそこで寝ていた。目がさめて、ああ母の夢だったなとしみじみと思い返した。子どもの頃住んでいた家のまんまだった。年は60くらいだった。父の死んだ後の家に、ちゃんと掃除してこぎれいに暮らしているけど、哀しいこと、あたしをすごく待ってること、一人で寂しいことが、クッキリと、鮮やかに出てきた。そして眠れなくなったので書きつけておこうと思って下に降りてきたら、A上さんからメールが来ていた。すごく愉快なメールだった。笑った。笑えてよかった。

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