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シャーロット
2012年04月14日(土)
おふろばに蜘蛛が一匹住んでおる。あたしはごきぶりやむかではなんの躊躇もなく殺すが、蜘蛛は殺さない。うちのS子は蜘蛛を殺すがそれは別の理由だ。学生のとき研究をしていたので、あっかわいいとかいってつかまえて、アルコールに漬け込むのだ。S子が残していった蜘蛛焼酎があたしの部屋のどこかにある。蜘蛛は生物学的に何も悪いことをせず悪意もなく生きているのだから殺してはいけないと、S子が言っておった。トメは典型的な蜘蛛フォビアで、どこで蜘蛛に遭遇しても金切り声をあげて硬直する。ほかの生きものは何でもOKなので、世の中にはなんとかフォビアというものがほんとにあるのだと知った。だからトメが叫べば行って蜘蛛をつかまえて遠ざけてやる。この蜘蛛フォビアはたぶん遺伝で、死んだ母もそうだった。母は攻撃性の強い人間だったので、蜘蛛をみかけるや叩き殺さずにはいなかったが、その行動を見ているとたんなる衝動や嫌悪感というよりなにか、前世からの因縁みたいなものがあるのかもしれぬと感じられたものだ。トメは食卓でピーマンフォビアも主張しているが、そっちはてきとうにあしらっておる。で、蜘蛛だが。たいていはつかまえて外に出す。ここ数回みかけたが、トメがいないのでそのままほうっておいた。トメが来るまでには(いつになるか)外に出しておいてやろうと思って。ところがゆうべお風呂に入ってるときに蜘蛛が出てきて壁を這ったので、つい「お、シャーロットだ」と心で思い、瞬時にマチガイを悟ったのである。名前をつけてしまった。そしたらもうあの蜘蛛は人格をもってこの家に居着いてしまったも同然である。それからも数度みかけたが、もはやただの蜘蛛にあらず、同居人ないしはペットのシャーロットである。シャーロット、いつか子を産み、やがて死に、子どもたちがシャーロットを襲名する。この家は蜘蛛だらけになる。
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