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父とこないだの怒りの表出

2011年11月17日(木)

怒りの表出といえば、このあいだ日本にいたとき、ヘルパーさんをキャンセルしてあたしが晩ご飯つくることになっていた。で、何たべたいというと「すきやき」というから、5時前に仕事やめて、買い物いって5時半ごろ父のところへいったら、ぷんぷん怒っておる。たしかにふだんの父は、4時半くらいにはごはんを食べる生活なのだが、お昼に来て、また4時半ではいくらなんでも何にもできないので、少し遅いからねといってあったのだ。しかし、そのとき、頼まれていたおせんべを買い忘れたことに気がついた。ごめん、ごめんというと、声を荒げて怒り出し、「甘いものばっかりで、あきちゃうんだ」「年寄りは食べることしか楽しみがないんだ」などと。だっておとうさんあたし仕事があるし、と抗弁すると、「そんなら来てくれなくてもいいよっ」というのであった。まーしかしそれはうりことばとかすてぜりふというやつで、買わずに無視して、すきやきをふつうに食べて、食べ終わってからスーパーにいっておせんべを山ほど買い込み、それから少しテレビみて帰ったわけだ。つらつら考えれば、まあ父も待っていたのだろうし、いつもと生活パターンがちがってまごついたのだろうし、たしかに食べることしか楽しみがないのだろうし。しかしあたしはあたしで、仕事はあるし、仕事しないと生きて行かれないし。どっちもしかたがないので、こうしてヘルパーさんに助けてもらうのは必至のことだし、またときどきこうしてソゴがあるのもしかたのないことだなあと結論づけたのである。そしたら次の日の朝、ごはんをつくりにいったら、新聞読んでいたがふと顔をあげて「きのうのすきやき、おいしかったよ、ありがとう」といった。このたちまち元に戻るすなおな性格と、すぐ下手に出る能力で、ずっと母と暮らしてきたんだなと感心したのである。母はひきずるのであった。

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