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箱根行ってきました。
2010年09月11日(土)
今週はずっと箱根にいました。芦の湯に2泊。塔ノ沢に1泊。それから桃源台に1泊しました。
芦の湯に行くのは、昭和天皇が崩御して以来。昭和天皇崩御の日、新幹線に乗って熱海で降り、バスで芦ノ湖まで行って箱根神社を見て、芦の湯に泊まりました。さびしい冬の日でした。霧に包まれて何も見えなかったのを覚えています。
芦の湯2日目にロープウェイを使って大涌谷へ。高いところは怖いから、飛行機もなるべく大きなやつに乗るのですけど、久々のロープウェイの怖いこと。怖いこと。途中で止まったらどうしようと想像するだけで、胸が苦しくなってしまいます。わずか8分がどきどきでした。大涌谷は初めて。ロープウェイが緑の尾根をひとつ越えると、そこは、なだれる土砂が黄色く染まった大涌谷でした。ロープウェイの中にも硫黄の匂いが流れ込んできました。あちらこちらから白い水蒸気が噴出しているところもあり、ああ、怖い、怖い。 でも、噴出した温泉で茹でた黒卵はおいしくいただきました。茹でたてはかすかに金属の味がしました。 同行した藤村先生と黒卵を剥いていたら、周囲を動画撮影の外人さんに囲まれていました。紅毛碧眼。何人なのか解りませんが、8人くらいがそろって黒卵を剥く手元を撮影していました。黒い殻から白い卵が出てきたところを、がぶりと噛んで「ほら、卵だよ」と見せるつもりが、どうしたわけか、白身の多い卵で、再度、がぶりとやって、黄身を見せました。手元を撮影した外人さんが頭を何度も上下させたのは、きっと「ありがとう」のつもりだったのでしょう。何も言わないシャイな感じは米国人でもなければ仏国人でもなし、ましてやおしゃべりなイタリア人でもなさそうだし、ドイツ人でもないとなると、いったいどこから来た人だったのでしょう? 大涌谷の駐車場には、エアポートリムジンも入っていました。
翌日は朝から土砂ぶり。どうも台風の影響らしいと気付きながら、ポーラ美術館からラリック美術館に回りました。
ポーラ美術館は展示換えのために割引料金。大雨なのにけっこうお客さんがいました。美術館前のバス停に透明な屋根があり、この屋根は三角形を二つ並べたような形をしていて、雨をよくよけるのに感心。箱根はいつの間にか美術館だらけになりましたが、昔は植物園がたくさんあったのを思い出しました。箱根だけじゃなくって観光地と言うと必ず植物園があったのはなぜでしょうか? 観光地の植物園が廃墟同然になっているのを時々見かけますけれども、美術館はそうはならないのかしら?
ラリック美術館へ行くと「今日は台風のため4時で閉館します」とのこと。せっかく来たのだから大急ぎで回ろうと、美術館に入りました。で、法政文芸の編集委員の女性二人が仲良くしゃべっている背後の窓の外で、大風に揺らぐ木々が滝のような雨に打たれているのを見て、内心、こりゃまずいかなと不安になったものでした。「嵐を呼ぶ女たち」というようなタイトルをつけたくなる光景でした。案の定と言うか、危機に気付くのが遅いというか、登山電車は運行停止。道路もあちらこちらで冠水。こりゃたいへんと、なんとか湯元まで戻ってくると小田急のロマンスカーも止まっていました。ローカルは運行していると言うので、法政文芸の編集委員諸君をローカルに乗せて、私は塔ノ沢の福住楼へ。6月に蛍を見に来た宿です。蛍が飛んでいた早川は、ごうごうと濁流が渦巻き、いまにも庭先に水が上がってきそうな勢いでした。 温泉の湯にも、泥水が入ってにごってしまったとのことで、お湯を汲みなおしている最中だと女中さんに教えてもらいました。
で、テレビをつけてみると、あふれ出しそうな酒匂川の中に取り残されたおじさんが、木に登って助けを待っている中継映像が目に飛び込んできて、びっくり。さらには台風が静岡県御殿場市付近で、熱帯低気圧になったと知って、さらに仰天。だって箱根は神奈川県ですが、御殿場市の隣なのですから。日本海側に抜けた台風は勢力が弱まるとタカを括っていたので、なおさらの驚きでした。静岡県は海側から台風に襲われることはあっても陸地側から台風が進入するなんてことは、想像を絶してました。思わず携帯をひっつかんで、法政文芸学生編集長を呼び出してみると「みんな、電車に乗って帰りましたよ」と言う返事。そう言う彼は、小田原泊まり。しばらくしたら、宿を見つけましたという電話をくれました。その頃には、止まっていた新幹線も走り出していました。と、ここまでは、法政文芸の編集委員諸君との合宿の話。
台風の翌日は、ゼミ合宿で桃源台へ移動。「桃源台集合」ってちょっとなあ、たいへんと思ってはいましたが、横浜市内に同じ名前の団地があるとは知らずにいました。私も以前、福岡の別府(べふ)と大分の別府(べっぷ)を取り違えて、熊本近代文学館の皆さんに大騒ぎをさせたことがありましたが、同じことが起きたのです。検索って、ふつう人が考えるのと違う答えを出しちゃうことがあるのですね。おまけに東名は前日の台風の影響が残っていて、高速バスの到着はいつになるのか解らないし、箱根の道路もあっちこっちで渋滞。そんなわけで、全員そろうまでにいろいろありましたが、午後から仙石原へ。すすき野原を歩きました。タクシーの運転手さんに聞いたところだと、今年のすすきは穂が出るのがいつもの年よりも早いのだそうです。こんなに暑いのにどうなっているのでしょう。
で、例によって、またまたノープランで、明日はどうしようと、宿に帰って相談しました。 「ロープウェイが怖いの」 そう言うと、なぜか幹事はかわいい顔をして 「じゃあ、ロープウェイに乗りましょう」 って、おいおいです。しょうがないなあ。
桃源台から大涌谷までのロープウェイは管理保守のために運転休止中なので、バスで大涌谷へ。大涌谷と早雲山を往復をロープウェイでしました。で、早雲山への行きは、男子学生と同じゴンドラ。怖がらせようとするのを「これ、これ、いけません」と静止して降り、帰りは全員で同じゴンドラに乗ることに。なぜか、女の子というか、女子学生のほうが怖い感じのツボを心得ていて、どきっとするような台詞を絶妙なタイミングで吐くのでした。ああ、怖いと思いながらも、こっちもだんだんやけくそになってくると、なぜか、周囲の景色が見えてきました。すると、2日前は、あんなに黄色かった大涌谷なのに、黄色い部分が少なくなっていました。土砂が流れ落ちたあとの、Vの字の谷のくっきりとした茶色をしていました。台風の大雨で、すっかり谷の硫黄が流されたようなのです。「れこはすごいや」と思わず見とれてしまいました。で、 「先生、あれは何ですか?」 と真下を指差されて、思わず 「なに? なに?」 と覗き込んだら、目がくらくら、胸はどきどき。ひどいや、学生といるときの教師の習性を利用するなんて。なんか答えなくちゃいえけないような気がしているものだから、思わず覗き込んじゃったのでした。困った、けれども、なかなか知恵者のおもしろいお嬢さんたちです。と、まあ、みんなで大笑い。またまた黒卵をみんなで食べました。1個食べると寿命が7年延びるそうです。そんなわけで箱根に5日もいました。ロマンスカーで新宿へ戻ると、都会の匂いが珍しくなっていて、まっすぐに家には帰らず、ちょっと新宿で遊んで帰りました。新宿も少しだけ秋になっていました。
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