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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

文庫目録

2010年05月03日(月)

 岩波、新潮、角川、講談社などの文庫目録を書店で配布しているからもらってくるといいとゼミ生に薦めた。文庫目録を読んでいると、へたな文学史の本を読むよりもよほどおもしろい。以前は、書店のレジわきなどに積んであるのを見つけて「これ、下さい」と言えばたいてい「どうぞお持ち下さい」という返事で、もらうことができた。

 3年ほど前、「文庫目録ありますか?」と尋ねたら、あっちこっちの引き出しを開けたり、棚の下を覗いたりして、見つけ出してもらったこともあった。そういえば近頃、文庫目録がレジのわきに積んであるのを見かけないなあと、その時は、その程度のことしか考えなかった。が、ゼミ生の報告によれば、「文庫目録を下さい」と言ったら、書店の店員さんに不思議そうな顔をされたそうだ。それで、重ねて「岩波文庫とか新潮文庫の目録が欲しいんです」と言ったそうな。その返事が「あれは書店用の冊子です」だったと。

 書店用としては総文庫目録(そんな名前だったという程度の覚えだけれども)そういう年鑑のような分厚い本が出されていて、お客さんの注文の本の版元がわからない時などに調べるのに使っていたものがある。それと勘違いをしたかもしれないとは思いつつも「書店用の冊子です」っていう返事はちょっとひどいなあと嘆息。もし私のようなおばさんが、どすの利いた声でも出せば、とたんに店長さんを呼びに行くようなアルバイトの店員さんが、ものを知らなそうな若い人だと思って、いい加減な答えをしたなら、それは言語道断。いったい本屋さんの中で何が起きているんだろう? とへんな感じがするゼミ生の報告でした。

 本屋さんと言えば、要塞のように積み上げられた「1Q84 Book3」を見て、もうちょっと上手に商売をすればいいのになあと思ってのは先月のこと。同じ本をいくら積み上げても、トイレット・ペーパーじゃないのだから、2冊3冊と買う人はいないだろう。「1Q84」のBook1や2を並べれば、それも買って行く人もいるかもしれないし、作中に登場する音楽などの関連の書目を集めれば、ついでにひょっと手を伸ばす人もいるかもしれないし、どう考えてもそっちのほうが商売人としても親切で、しかも売り上げが上がるように思えるんだけど?「1Q84 Book3」の要塞といい、文庫目録を知らない店員さんといい、せっかくのお客様を逃しているんじゃないかと、まあ、そんなことを昔から本屋さんに出入りしている素人としては考えました。

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