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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

光が丘の桜

2009年04月10日(金)

 今年の桜は咲き始めてから満開になるまでが、ほんとうに長い桜でした。

 満開になった桜がいっせいに散ってゆきました。散った花びらが地面に白く敷き詰められていました。桜の花びらの絨毯の上にシートを敷いて、静かのお花見をする女の人がふたりいました。自転車のおじさんは花びらの絨毯の上をくるりくるりと蛇行しながら走っていきました。

 乳母車に乗っていた男の子が、白い花びらの上にトンととびおりて、あたりを不思議そうに眺めていたかと思うと、いきなり地面に向かって「ばいばい」「ばいばい」と小さな手を振り始めました。乳母車を押していたお母さんが「何にばいばいしているの?」と聞いても、答えずに一身に地面を見つめて「ばいばい」を繰り替えていました。白い絨毯に、桜の枝が影を落とし、光の波模様を描き出していました。風がさあっと吹くと、白い花びらがまた舞い上がりました。

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