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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

東京秋天

2004年10月29日(金)

 歌人の石井辰彦さんから新しい歌集を頂戴しました。「全人類が老いた夜」(書肆山田刊)です。

 厄災について酒場で酔客が語り合ふ。
           九月の晴れた夜に

 空港も未来も封鎖。
      だって、全人類一気に老ゆる夜、だぜ

 2001年9月11日は、私は日中のシンポジウム開催のため、北京にいました。アメリカの同時多発テロのことを知ったのは翌日の朝食の時でした。私はホテルの部屋で高いびきでしたが、同行者の中上紀さんは一晩中、テレビの前で、英語のニュースを他の人々のために翻訳していたそうです。
 北京はその日、夏の名残の暑さでかんかん照りでした。北京秋天と言われる爽やかな秋はまだまだ先という感じでした。このとき、リアルタイムの報道が少ないと批判を受けた新華社通信はイラク戦争では、現地からの報道を大幅に増やしました。今日も新華社通信はイラクで東洋人の男性の遺体が発見されたことをいち早く伝えています。発見された遺体がイラクで人質になっている日本人男性のものかどうかはまだ確認中だそうです。

 中上紀さんからは荒木経惟さんとのコラボレーション「再びのソウル『記憶』」(アートン刊)が届きました。

 今日の東京は北京秋天ならぬ東京秋天で、気持ちのよう晴れです。一週間前には台風の通り過ぎたあとのべたべたした蒸し暑さに悩まされていたのが嘘みたいにもう秋の終わりの気配です。

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