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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

紫色がどよめいて

2008年03月23日(日)

 昨日の読売新聞夕刊一面の記事のタイトルは「まってました。桜もメジャーも選抜も」でした。

 昼過ぎにテレビをつけて甲子園の第二試合の実況を聞きながら大量の洗濯物をやっつけ、ベランダの植木鉢に水が足りないのを発見して水をやり、その途中で米屋さんに電話をかけてお米を注文し、ついでに洗濯機を回し、台所の流しに洗う物の山ができているのをぼちぼち片し、とまあ、一週間分の家事が滞っていたのと格闘していました。で、第三試合になったら、テレビの前に乾きあがった洗濯物の山を積んで、それを片付けながら、安房高と城北高の試合を見るぞと掃除機をかけたところで、第三試合の中継が始まりました。
 
 正直に言って、これを見逃したら、きっとあと100年くらいは甲子園の中継で母校のユニフォームは見られないだろうという心境でした。だって32年前に千葉県大会に決勝戦に出たときには、銚子商業に20点以上の差をつけられて、誰も一塁に出塁しないまま終わってしまったのですから。

 洗濯物の山の向こうにまず見たのが安房高女子の新しい制服。ダブルの上着というのは変わってないれども、ちょっと良いボタンがついてボタンの数も4つから6つにふえてました。それに臙脂のネクタイが加わっていました。ふむふむ。こういう制服になったのね。アルプススタンドは紫の塊。全部、紫に染まっているので、驚きました。NHKのアナウサーは「ともに攻撃的な守備が特徴の学校です」と解説。はて? 攻撃的な守備? それじゃあ、決着がつかないじゃないと、ぶつぶついいながらまずバスタオルを5枚ばかり畳むことに。

 ブラスバンドは絶対城北高のほうが上手でした。ちゃんとトランペットの音がグラウンドに響き渡っていました。攻撃の局面が変わった時に、演奏の曲をすばやく変えても音が安定しているブラスバンドでした。たいして我が母校の紫集団。聞こえるのは迫力のある大太鼓の音。「紫のアルプススタンドが喜んでいます」ってアナウンサーが言っていましたけど、ほんとにちょっとしたチャンスでも大喜びのどよめきが伝わってきました。その間に、シャツ、パンツ、上着にズボンにパジャマと洗濯物をたたんで片付け、ひょっとして、ひょっとしてこれは勝てる試合なんじゃないか? と思い出したのは4回表の攻撃の時くらいから。

 時計の針は16時30分に近づいていました。今日は法政大学のゼミの追い出しコンパ。17時30分に市ヶ谷駅集合。ああ、行かなくちゃ。でも試合も見たい。野球の試合以上に、紫の塊が大喜びをするところを見たい。と思いつつ、後ろ髪を引かれながら、地下鉄に乗り市ヶ谷に。野球の試合は夜のニュースでもハイライトシーンを見ることができるけれども、紫の塊の大喜びはライブでしかみられないからなあと、思いつつも、でもだんだん後半になると喜ぶよりがっかりするシーンになっちゃうかもしれないし、と考えながら市ヶ谷駅に到着。

「誰か甲子園の野球の結果を教えて」
 と御願いしてみました。
「え、第二試合ですか」
「第三試合の結果」
「まだ第三試合の結果は出てませんよ」
 やっぱり最後まで試合を見ていたら、大遅刻をするところでした。
「あ、第三試合の結果が出てます。2−0ですね。しかも9回表に2点とっているから、これって見ていたらそうとうおもしろ試合だったでしょう」
「やっぱり勝ったか。ばんざい」

 さぞや、紫の塊は大喜び、大歓喜だったでしょう。見られなくって残念。あ、でも、勝ったってことは、もう一試合甲子園で、安房高の試合を見ることができるんだ。昼までは100年に一度だぞって思ってましたが、これで100年に2度になりました。きっと次の試合の時はあの紫の塊がもっとおおきな塊になっていることでしょう。

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