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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

今日の空

2008年02月29日(金)

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 西の空がだんだん春になってきました。4年に一度の今日の空です。

 灯油を買ったら一缶1,980円でした。信じられない値段。スタグフレーションという言葉を覚えたのは小学校5年生の冬。石油危機で狂乱物価といわれた頃でした。なぜかトイレットペーパーがものすごく値上がりすると言われて、街じゅうの人がトイレットペーパーの買いだめに走ったのです。で、トイレットペーパーを自転車の荷台に積んで走っていたおじさんが強盗に襲われたりしました。

 物価が上がっても景気がよくない、したがって賃金もあがらないというスタグフレーションという言葉を久しぶりに聞きました。40年ぶりまでは行かないか。まあ、そのくらいです。で母が言っていたのでよく覚えているのは「あの狂乱物価がなければ。子ども二人を私立大学にやるくらいの蓄えはあったんだけど」という言葉。「へえ」と思って聞いていました。結局、私が学費が安い明治大学の2部を選んだし、弟は国立大学へ入りました。私は学費の問題というよりも学力の問題で2部を選んだのだし、弟は希望の学科が国立にしか設置されてなかったので、あんまり母を嘆かせずにすみました。

 もう明治大学の2部もなくなっちゃったし、弟が進んだ国立大学もほかの学校と合併して別の名前になってしまいました。

 知り合いと話していたら、国民年金の掛け金が高すぎない? っていう話題になりました。収入に関係なく一律に掛け金を取られるのは「払わない」のじゃなくて「払えない」って話です。そりゃそうだ。

 年金と保険。これがちゃんとしていればかなり安心して暮せるんですけど。どうもそういう実感がないの。ええと地震とか台風とか災害があるたびに、高齢の人が亡くなったり家がつぶれたりしていますけど、そういうことを聞くにつけ家族に頼らない老後って、ほんとうに良いのかなあって思います。

 うまく言えないのだけど、家族に縛られない自由な社会ってのに、私などは憧れたんだけど、その結果が公的扶助の整った社会ってことになるのでしょう。でもそれってうまく行くのでしょうか?

 なんかねえ、時々、なんで自分は若いとき、あんなに臆病だったんだろうって考えることがあります。で、ああそうだ。家族の面倒にみる余力が必要だから、臆病になっていたんだなあって思い出すんです。それはそれでよかったんです。春めいた空を見ながら、ぼんやりそんなことを考えています。

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