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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

炎は現象である。

2008年02月16日(土)

 昔、炎は液体なのか、気体なのか、それとも固体なのかと理科の先生は尋ねたら
「炎は現象である」
 と言われました。中学生の時でした。
 
 うちの子どもたちも同じ質問を中学校の理科の先生にしています。その先生のお答えも
「炎は現象だから、物体ではない。物体ではないから固体、液体、気体の区別にはあてはまらない」
 というお答えでした。どうも親子そろって、物体と現象の区別がつかないみたいです。

 私の時代よりも息子や娘の時代の中学校の先生のほうが丁寧に教えてくださるみたいで
「いいですか。空気は物体です。で、その空気の流れができるとそれは風です。風は現象です」
 とちゃんと答えいただいたのですが「???」だった子どもは、息子だったか娘だったか忘れましたが
「でも風は気体でしょう」
 と先生を困らせたみたいでした。ご丁寧に息子も娘も同じ質問を同じ先生にしているのです。

 先週、今週と東京は冷え込んで、お葬式が続きました。お寺にでかけてお坊さんが「諸行無常」と唱えるのを聞いてきました。生花で飾られた祭壇に蝋燭の炎が揺らぐのを見ていたら「炎は現象です」と言った中学校の理科の先生の声を思い出しました。

 人が生きているのも、炎が現象であるのと同じように現象なのだなあと思うそばから「でも風は現象でも、気体でしょ?」と尋ねる自分がいて困ってしまいました。夕方、西に沈む陽の光が、ひとつき前と違ってやわらかい茜色になっています。雲が陽に輝くもの「現象」ですね。

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