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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

ちょっと、おもしろかったこと

2007年12月08日(土)

宝石屋の主人を驚かす
 知人と丸の内中通りを歩いていて、小さな宝石屋があったので、ショーウィンドウを覗き込んだ。もう日が暮れていたせいもあるけれども、左目があまりよく見えないこともあって、ウィンドウのガラスに頭をごんとぶつけた。目から火花が出るほど、ごんとやった。「ははは」と笑った知人が、頭をぶつけたくなるほどの宝石とはいったいどんなものかと、これまたショーウィンドウを覗き込もうとしたとたんに頭をごんとぶつけた。
 どうも、ショーウィンドウのガラスが通常よりも分厚くできているらしいのだ。二度も「ごん」「ごん」やったものだから宝石屋の奥から主人が出て来てとおりのほうを怪訝な顔で眺めていた。
 宝石屋の主人はグレーのスーツを着た美人だった。

タクシーの運転手を驚かせたこと
 「東京駅まで」とタクシーを拾って、後部座席で「年収」の話をしていたことがある。幾らくらいもらえるかとか、幾らぐらい欲しいのかとか、そんな話だった。
「あんまりばかなことを言っていると、また、どっかに頭をぶつけちゃうからな」
 と、話の相手は不思議なことを言った。と、そのとき、ちょうどタクシーは東京駅に到着した。支払いを済ませた次の瞬間、車を降りようとした話の相手は「ごん、ごん」と二度も、タクシーの天井に頭をぶつけたのである。一度目は勢い良く「ごん」とぶつけ、二度目はあわてて「ごん」とぶつけたのであった。隣にいた私も驚いたけれども、タクシーの運転手はもっと驚いていた。運転を仕事にしている人には、車体から響く衝突音ほどどっきりとさせられるものはないのは想像がつく。
「大丈夫ですか? 大丈夫ですか? 大丈夫ですか?」
 運転手さんは早口で三度も同じ言葉を繰り返した。
 これは去年の暮れのこと。

ジャック氏のボーナス、クリちゃんの三ツ星、キクチ君がキクちゃんになる話
 金曜日6限の授業を終わって飯田橋の駅までクリちゃん、キクチ君と歩く。ボーナスが出たというジャック氏が電話をしてきて、いつもの「ブリッジ」で遅いご飯を食べようということになった。「ブリッジ」の向かいの文教堂に派手なミシュランの広告が出ていたので、ジャック氏が来るまで、ミシュランを見物しようということになった。けれども、日本語版は売り切れ。残っていたのは英語版だけ。
 クリちゃんがミシュランで3つ星を獲得した恵比寿のレストランで彼女と食事をした時のことを話してくれた。王子様が出てきそうなレストランだ。クリちゃんの話はおもしろかったけれども、そのおもしろい細部が、今朝になると思い出せない。ただ、おもしろという波みたいな感じだけがしわしわと残っている。
 キクチ君はある人物から時々「キクちゃん」と呼ばれているらしい。私、クリちゃん、ジャック氏の三人でそれを聞いて「えっ」とか「へえ」とか「ほんと!」とそれぞれに驚いたり、感心したり意外だったりして、同時に三人三様の感嘆詞をもらす。感嘆詞の見本みたい。
 ジャック氏はあいかわらずボーナスが多すぎること(少なすぎることじゃない)を嘆いていた。

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