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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

酔っ払ったあとで

2007年12月05日(水)

 ちょっとだけボードレールの「悪の華」を安藤元雄訳で呼んでいたら、しごく、幸せだった。ぼやぼやとした靄のかかった夕暮れで、西の空が淡いブルーとピンクに染め分けられてゆく時刻の物憂さが、身体にしみこんでくるようだった。学校にいたり、街に出かけていたりすると、空の高いところから振ってくる物憂さは、身体の上をすべり落ちてしまうものだ。

 もっと、ぼんやり本を読んでいたいけれど、ああ、仕事、仕事、仕事しなくちゃ。

 昨日、新丸ビルで鴨を食べた。鉄砲で撃った小さい鴨を炭火で焼いたやつ。それから、丸の内中通りをペニンシュラホテルまで歩いた。丸の内警察のそばで、ちょっと前まで占領期の名残のような英語の看板が出ているアーケードのあったビルがホテルに建て替えられていた。

 ペニンシュラホテルのバーで飲もうと思ったら、満席だった。エレベーターに乗り合わせたサラリーマンのおじさんとお兄さんの中間くらいの年齢の人(いったいいくつだ?)が「こんなところ、世間知らずの女の子を連れてきたら、すぐに口説けるよなあ」って話していたけど、たぶん女の子のほうがリサーチは詳細にしているはずだろうなって、苦笑いがもれたけど、気づかれなかったみたい。白い制服のきれいなボーイさんがいた。ボーイさんだけど女性。親切そうな微笑の持ち主だった。

 なんて、思い出している閑に仕事しなくちゃ。東京駅から有楽町、汐留あたりはここのところ、急速に再開発が進んで、だんだん見たことがない街になっていく。

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