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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

薔薇の土を買う。

2007年12月02日(日)

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 薔薇を植え替えるための土を買ってきた。植え替えにはちょっと遅い気もするけれども、寒くなるのも遅かったのでまあいいかと思っている。

 一重の赤い花が咲く茎の太いつる薔薇で、一昨年までは春にも秋にもたくさん花をつけていたけれども、今年はさっぱりだった。そろそろ植木鉢の土の力がなくなってきたみたいなので、ビニール袋に「薔薇の土」とかいてある大袋を買ってきた。

 ベランダに植木鉢を並べるのはいいけれども、最初の頃、つまり20年前は土を買うのには、ものすごく心理的抵抗があった。土なんか買わないで、どこか空地か斜面からとってくればいいような気がして仕方がなかった。周囲には雑木林が多いので、良い土がいっぱいある。けれども、いざ、土を取りに行こうとすると今度は不審者と間違われそうで、それはそれで心配だった。水道ってものが珍しかった時代にはきっと水道代を払うのに、心理的抵抗があったのかもしれないなあとその頃、想像してみたりした。

 そう、そう。ミネラルウォーターが出てきたばかりの頃、飲み水なんかわざわざお金を出して買う人がいるのかいって大人が話していたのを覚えている。いや、私が育った家だって、水道はあったけれども、井戸も併用していて、飲み水としては井戸水のほうがだんぜんおいしかった。ポンプも電動じゃなくて、手動だったから飲み水は「只」でしかも「ミネラルウォーター」だった。

 でも水道代を払うのに心理的抵抗があったことなない。が、土となると違って、どうしてもどこかから掘ってこなくちゃいけないような気がしてならなかった。

 で、その心理的抵抗のために最初は「赤だま土」とか「腐葉土」など土の種類を選んで、自分で配合していた。とは言え、しょせんベランダなので、配合してもなんだかちまちましている。なんだかプラモデルとか、そういうキットがそろった玩具を組み立ているみたいな気分だった。そう思った時「パンジーの土」とか「薔薇の土」とか「観葉植物の土」とかいてある袋の土を買うのになんの抵抗もなくなってしまった。

 薔薇の土を買うことは買ったけれども、またしばらく植え替えをする時間がなさそう。でも、土さえ買ってあれば、ちょこっと閑になった時にさっさと植え替えができるだろう。

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