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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

名刺の注文

2007年03月30日(金)

 息子に名刺を作ってくれと言われました。会社に入ると名刺を作る人が多いのですが、会社の作ってくれた名刺をそのまま使うのが一般的だということを私は知りませんでした。私の名刺はずっと前から決まったお店で作っています。

 ある時、知人と銀座を歩いていて、名刺が刷り上ったという連絡を受けたことを思い出しました。それで、「ちょっと寄ってとってくる」と言ったら、会社を辞めたばかりの知人がしきりの「え、勤めてないのに名刺を持っているの?名刺って個人でもつくれるの?」とへんな感心の仕方をしたので驚いてしまいました。会社に勤めていない人間は名刺を持っていないと思い込んでいたのですね。社員証はもってませんけど、名刺は小説家のような仕事でも必要な時があります。肩書きに「小説家」とか「作家」と書くのはへんなので、肩書きのない住所と氏名だけの名刺です。
 この肩書きなしの名刺を出すと「僕も肩書きなしの名刺って持ってみたいなあと思うときがありますよ」と言ってくれる人がいます。個人で名刺を持っていることに驚く人もいれば、肩書きなしの名刺に憧れる人もいるんですねえ。

 自分の名刺の注文を出すとき、息子の名刺も注文しました。息子はいちばん安い紙にして、なんとなくそうしたかったので。で、肩書きもなし。今日、息子の名刺の校正刷りがファックスで送られてきました。「Horn」って入れてと言われて、ああ、そうかと気づきました。音楽の場合は専門の楽器の名前を肩書き代わりにいれたりするんです。でも「Horn奏者」ってのはちょっと恥ずかしいのだそうです。まだそんなに仕事がないからっていう意味もあるかもしれません。でも、言われてみれば音楽会のパンフレットにも「Horn」って書いてあって、「Horn奏者」とは書いてありません。名刺のいろいろですね。

 週明けから新しい名刺を持って歩く人もたくさんいることでしょう。

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