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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

大原まで

2007年03月18日(日)

 家を建てるつもりでいる大原まで行ってきました。デジカメが壊れちゃっているから写真は撮影できませんでした。東京を出るときにはまだ雨は降っていなかったと思うのですが、大原の駅は少し濡れていました。大きな雨粒の雨が、数でも数えるようにぽつんぽつんと背や肩それに頭に降りかかりました。

 敷地の西側のがけに生えていた木を切ってもらっているところです。工事のためには、この崖の木を切らなければならないのが少し惜しいです。というのも直径15センチくらいの幹がある椿は、山桜、椎の木などが思い思いに生い茂っている崖ですから。椎の木には自然に椎茸が生えていたそうです。
「切り株からまた芽が出ますよ」
「切り株から芽が出て生い茂るころには、私はおばあさんですね」
 「あはは。」
 時間が螺旋に進んで行く、そういう感じがこのごろはしきりにします。もう20年くらい昔、にも誰かと同じような会話をした記憶がありました。ええと、あれは誰とだっけ?と考えていたら、館山にある父母のお墓を思い出しました。お墓は山の斜面にあるのですが、ある時、母が斜面に生えていた大きな椿の木をさして「この木がなければ海がよく見えるのに」と、たまたま墓参りに来ていた隣の墓の家の人に言ったのだそうです。すると隣の人は「ああ、そうですね」とうなづいて、それから三日ばかりして、墓地の行くと椿の木はみごとに切り倒されていて、母を驚かせました。隣の墓地の人の人の仕事が元は樵だったと知ったのはその後でした。
 「樵じゃあしょうがないなあ」て半分呆れたように母が話していました。で、その母のお骨をお墓に収めてしばらくたってから「切り株が残ってますからまた生えてきますよ」と樵さんが言ってくれたのです。

 崖の木を切って、昨日、燃やした熾きが、敷地の中で今日もまだ暖かくともっていました。お芋をアルミホイルに包んでん投げ込んでおけば、こんがり焼けそうなとぼり方でした。

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