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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

登校拒否

2006年06月04日(日)

 池袋のリブロから本が届いた。木曜日の夕方に買って配送を頼んだ本だ。大学のゼミのテキストに使う文庫本を探しに行ったついでに、アナトール・フランスの小説集とバタイユの著作集を見つけてついつい買ってしまい、あんまり重いから配送を頼んでおいた。

 地下鉄有楽町線の江戸川橋の駅は壁面がピンクとブルーに塗りわけられている。たぶん、護国寺や飯田橋と勘違いして降りてしまう乗客がいるから、壁をそんなふうに塗りわけたのだろう。この4月からこのピンクとブルーの壁を見るとことんと寝てしまうということが何度もあった。目が覚めるのは市谷であったり、ひどい時には桜田門だったりする。ははん、これは登校拒否の症状が出ているなと内心で感じていた。ひどく不思議な眠り方で、江戸川橋だと思ったとたんに眠ってしまうのだから。5月になってどうにか登校拒否の症状が治まってきた。つまり江戸川橋のホームを列車が滑り出しても、眠気を襲って来なくなったということ。

 登校拒否の薬は「本」。結局、フランスの小説が好きだったのだなと思う。なんだ、かんだと言っていちばん楽しんで読んだのは、とゆうより夢見るように読んだのはフランス小説だったんだなあと、この頃思う。夢の見たくない日は日本の小説を読んでいたので、日本の小説は別格。それからバタイユやロラン・バルトなどの評論やエッセイ。そんな本がいっぱいあっても、なかなか高価で手に入れられなかったし、読んでもわけがわかんなかったし、それやこれやで、持ってなかったり、うんざりして古本屋に売り払ったりした本をまた買いあさっている。気まぐれに。で、また学校をサボって本を読んでいたいなあという気になっている。

 毒は毒を持って制すではないけれども、学校サボって本を読んでいたいなあと思って本を買いあさるほうが、江戸川橋の駅で気絶したみたいに眠ってしまうよりはやや実害が少ないと、思いたい。

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