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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

香りの来訪者

2004年09月03日(金)

 夜はさすがに涼しくなりました。8階の家でも騒がしく鳴く虫の声が窓を開けているとよく聞こえてきます。クーラーよりも自然の風は身体に優しいので、くつろげます。昨晩も夕食の時は外の風を家に入れていました。

 すると、甘い香りが風にのってやって来ました。パイプ煙草の香りです。きっと隣のご主人がベランダでパイプを楽しんでいるのでしょう。香りのおすそ分けです。チョコレートフレーバーでした。

 ちょうど、こちらも食後ののんびりした時で、香りの来訪者は大歓迎でした。外の風をひとりで楽しみたくなるような夏の終わりの晩でした。

 最近は受動喫煙なんて言葉もあって、喫煙者は形見が狭く、ベランダでしか煙草がすえない蛍族なんて言葉もあります。もし、隣家が強固な非喫煙者だったらベランダでの喫煙も苦情の対象になるでしょう。ほんとうお隣さんとの関係は難しい。遠くの何の関係もない人と喧嘩をするなんていう人はいないのですから、隣こそむずかしいのは当たり前でしょう。

 ロシアとは北方領土問題、中国とは尖閣所要問題、韓国とは竹島問題、太平洋を挟んだアメリカとな日本国内の基地問題。こんなふうにならべてみると島国の日本もなかなか国境を接している国とは、解決の難しい事柄を抱えているものですなと、なぜか、パイプの煙に誘われて途方もないことを考えていました。

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