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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

大風の日

2006年03月12日(日)

 朝、目がさめたら大風が吹いていました。海から吹き上げる大風が関東平野に砂塵を巻き上げて通り過ぎて行くと春が来たのだなと確信します。

 来年(08年)春から静岡新聞連載小説のために徳川家康の本を読んでいます。家康が江戸に入った時の江戸城はほんとうに荒れ果てていて、周囲は塩水が染み出す湿地だったようです。そんな場所をまるで開拓するように江戸の町の建設を始めたということが解ります。

 3月10日は東京大空襲の日でした。東京でも式典があったとニュースが伝えていました。東京が焼け野原になってしまったあとで、山岡荘八は「徳川家康」を書きはじめています。これが空前のベストセラーになったのには、家康が江戸を建設した将軍だったという事情も重なっていたような気がします。豊臣秀吉が朝鮮侵攻に現を抜かし、北京に帝国を作り出す夢を見ていた時、家康は塩水が噴出す土地に上水道を作り、堀をほって水はけを良くして、土手を築いて地割りをして町に住む人を募っています。

 家康のフロンティアに天皇陛下が来るまでには300年もの時が流れたのだなと、大風の音を聞きながら思いました。江戸の町はたびたび火事に襲われたそうです。さらには、関東平野は何度も大地震に襲われています。

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