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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

傘、かさ、カサ、また傘

2004年06月23日(水)

 御茶ノ水駅から駿河台下交差点に至る駿河台通りはいつの間にか明大通りという名前になったようです。その明大通りの坂に、傘がいっぱい捨てられていたことがあります。今回のような昼間の台風の時のことです。私はその時、明治大学小川町校舎で卒業生名簿の校正のアルバイトをしていました。台風が関東に上陸したので、アルバイトも帰宅していいということになったのですが・・・。
 いったいこんな雨風の中でどうやって家に帰れというのだろうと困ってしまうほどの吹き降りでした。帰宅の許可が出た時はすでに電車も地下鉄も止まっていました。「なんで地下鉄が止まるんだ?」誰かが言ったのを覚えています。丸の内線は四谷近辺で地上に出るし、御茶ノ水駅を出たところでも、ちょっとだけ川の上を走ります。そんなわけで地下鉄と言えども台風の影響は免れがたかったのです。

 突然閑が出来た我々はさっさと仕事の道具を片付けて、外の吹き降りを見ながらお茶を飲んでいました。台風はいつもでも居座ったりはしないのですから。

 青い空が見え出した頃、戸外に出てみると駿河台通りの坂は傘、傘、傘、あっちにもこっちにも傘が放り出されていました。どの傘も骨が折れたり柄が曲がったり、いずれも風の勢いのすさまじさを語っているものばかりでした。捨てたというよりも強風に持っていかれたので、持ち主があきらめたというような散らばり方でした。なかには並木の枝に引っかかっている傘もありました。

 日本は世界で一番たくさんの傘を消費している国なのだそうです。

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